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戦国異伝
第三十三話 桶狭間の前にその九
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である。まさにそれだ。
「雨や雪を見るのもよいだろうな」
「そしてですか」
「酒ではなく茶を」
「上杉謙信は月を見ながら酒を飲むのが好きという」
 謙信の酒好きはつとに知られている。陣中でも酒を欠かすことはない。その話をだ。信長も家臣達にしてみせたのである。
「ではわしは茶じゃ」
「茶をですか」
「花鳥風月と共に」
「そうする。確かに月を見ながらの茶は美味い」
 それはもうしているというのである。
「では。さらにじゃ」
「雨や雪も」
「それもでございますか」
「楽しもう。機会があればな」
 そんな話をしてだ。そのうえでだった。
 信長は茶を飲む。そうして今は時間を過ごすのだった。悠長にである。


第三十三話   完


                 2011・3・21
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