第三十二話 結納その九
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「特に」
「わしも最初はそう思っておった」
信長もだ。実はそうだというのだ。
しかしだ。それと共にであった。こうも言う。
「今は違う」
「何故そう思われるようになったのでしょうか」
「そなたを見ておってじゃ」
それでだ。変わったというのである。
「どうもな。わしによく似ておるわ」
「酒が飲めないところ以外にでございますか」
「まず気が強い」
その気性がだというのだ。
「そして周りをよく見ておるな」
「確かに見る方です」
「そして馬も好きじゃな」
「申し上げますと武芸全般が」
「その辺りも似ておる」
また話す信長だった。
「しかも勘が鋭い」
「それはそうですね」
勘の鋭さはだ。帰蝶もなのだ。
彼女のその勘の鋭さはかなりのものだ。信長も鋭いがだ。彼女にしてもだ。その勘の鋭さはだ。相当なものなのである。
「しかしそれだけでは」
「違うというのじゃな」
「似ているというところまでは」
「いや、他にもあるぞ」
「他にもですか」
「食べるものの好みも」
それもだった。
「味噌は好きじゃな」
「はい」
「甘いものも」
「ついでに申し上げますと味は濃い方が」
「やはりわしに似ておる」
その味の好みだ。話されるのだった。
「そうしたところもな」
「味の好みもですか」
「そうじゃ。そうしたところを見ていってじゃ」
「似ていますか」
「夫婦だからかのう」
似ている理由をそれではないかと述べる。
「やはりな。それでか」
「どうでしょうか、それは」
「まあ似ておることはわかったな」
「そこまで御聞きしますと」
「意外なところであっさりしておるしのう」
「ついでに言えば嫉妬深い方ではありません」
「わしもじゃ」
嫉妬という感情はだ。二人にはなかった。
信長もだ。その嫉妬というものについて話すのだった。
「他人を羨ましいとは思わぬな」
「あくまでご自身はご自身ですね」
「他人を羨んで何になる」
これが信長の考えだった。それを実際に口に出すのである。
「何かを生み出すか?」
「いえ、何も」
「そうじゃな。羨んでも何にもならぬ」
また言う信長だった。
「よいものを取り入れるのならともかくじゃ」
「その通りですね。そうしたところも」
「似ておるのう、わし等は」
「これは最初からでした」
帰蝶のそうした嫉妬に縁がないところはだ。そうだというのだ。
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