暁 〜小説投稿サイト〜
戦国異伝
第三十二話 結納その一

[8]前話 [2]次話

                  第三十二話  結納
 信長は尾張に戻るとだ。まずは。
 信行を召し出してだ。そのうえで告げるのだった。
 彼は既に髪が戻っている。剃っていた髪はもう髷になっている。
 その彼を己の前に出して。そして告げるのだった。
「ではこれよりじゃ」
「はっ」
「蟄居を解く」
 こう彼に告げた。
「よいな」
「有り難きお言葉」
「そなたには早速働いてもらう」
 蟄居を解いてだ。すぐにだというのだ。
「清洲の町造りに励むのじゃ」
「それでございますか」
「他の場所にあらかた送ってしまった」
 そして清洲にはだ。どうかというのだ。
「肝心の清洲はじゃ」
「それがしですか」
「だから頼むぞ」
 信長は笑顔になっていた。そのうえでの言葉だった。
「この時を待っておったわ」
「しかしそれがしは」
「何、確かに反省はせねばならん」
 忘れてはならない。それは言う。しかしだった。
 信長は己の弟にだ。あくまで言うのだった。
「しかしそなたはわしの弟でありじゃ」
「弟であり」
「織田家にとって欠かせぬ者、その力は必要じゃ」
「だからこそすぐに」
「そうじゃ。働いてもらう」
 そのことはだ。変わらないというのだ。
「一門もまとめてもらうぞ」
「わかりました。それでは」
「これから何かと忙しい」
 信長は話を変えてきた。その変えてきた話は。
「尾張の政だけでなく伊勢への謀もある」
「そして今川ですな」
「そうじゃ。もう少ししたら来るぞ」
 信長の目が光る。その目での言葉だった。
「大軍でのう」
「それに対して我が軍は」
「兵では劣る。まあ今回は兵の問題ではない」
「それではないと」
「正面から戦っては多くの兵を失う。それは避ける」
 こう話すのだった。信行にもだ。
「考えはある。その時に仕掛ける」
「では今は」
「既に尾張の東と三河には人をやっておる」
 既にだ。そうしているというのだ。
「もう調べておるわ」
「そうしてですか」
「戦は弓を放つ前からはじまっておる」
 信長の考えがだ。ここで出た。そしてだ。
 それを言ってだ。彼はだ。
 信行に対してもだ。こう命じた。
「その時はそなたもじゃ」
「働かせてもらいますか」
「そなたのできることをしてもらう」
「それがしのできることを」
「そうじゃ。してもらう」
 言葉が強くなる。
「頼むぞ。織田家の為に」
「はい、承知しております」
 こうしてだった。信行が戻ってきたことはまず信長に笑顔で迎えられた。こうして織田家の主だった面々が全て戻った。そうしてであった。
 彼等は今川に備えつづ尾張を治め密かに伊勢に策を仕掛けていた。しかし行われているのはそうしたことばかりではなかった。
[8]前話 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ