第三十一話 尾張への帰り道その十
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
そうしてだ。馬の薬のことを教えだ。そうしてからだ。
駿府の城に戻り。そのうえで今度はだ。
剣を庭で振るう。そこに元康が来た。
彼はだ。氏真の姿を認めるとすぐに彼に声をかけた。
「ここにおられましたか」
「うむ、先程まで城の外に出ておったがな」
「探しておりました」
元康は氏真の前に控えて述べた。
「殿が御呼びでした」
「父上がか」
「はい、戦のことで」
話があるというのだ。
「それで御呼びしろと」
「戦のう」
戦と聞くとだ。今一つ浮かない顔になる氏真だった。
そのうえでだ。元康に対してこう話すのだった。
「わしは剣はともかくじゃ」
「戦はですか」
「どうも不得手じゃ」
それはだというのだ。浮かない顔で述べる。
「兵達を操るのが駄目じゃ」
「その為に我等がいますので」
「安心せよというのか」
「はい、それは」
こう慎んで述べる元康だった。
「ですから」
「頼むぞ。そしてじゃ」
「そして?」
「そなた奥方とは上手くやっておるか」
話を変えてきた。彼の妻について尋ねるのだ。
「それはどうじゃ」
「はい、婚姻したばかりですが」
「仲はよいか」
「何か。妻を迎えるというのは」
元康はそのことにだ。狐につままれた様な顔を見せた。
「不思議なものですな」
「そうそう、それは麿もじゃ」
「若殿もでございますか」
「うむ。それまで一人で自由にやっておったのにじゃ」
どうなるかというのである。
「そこに。おっかないのが来るのじゃぞ」
「奥方は怖いものでございますか」
「我が祖母殿を見るのじゃ」
氏真にとっては祖母であり義元にとっては母だ。その存在も話すのだった。
「いやあ、誰も勝てぬじゃろ」
「あの方ですか。確かに」
「そうじゃ。おなごは可愛いものじゃが」
それでもだと。元康に話す。
「怖いものでもある。忘れてはならんな」
「そうなのですか」
「そなたもそのうちわかる」
今でもなくともだ。それでもわかるというのである。
「では。何はともあれじゃ」
「はい、殿の下に参りましょう」
「そうじゃな。竹千代、おそらくはじゃ」
氏真はあらためてだ。元康を見て述べた。
「そなたが先陣じゃな」
「それがしがでございますか」
「そうじゃ。そなたとじゃ」
もう一人はというとだ。彼だった。
「和上じゃ」
「雪斎殿でございますか」
「正直なところ今川で先陣を任せられるのは二人しかおらん」
それは氏真が見ても言うことだった。何故かというとだ。
「今川は。戦はどうもな」
「不得手だというのですか」
「麿も戦は苦手じゃ」
それは認めるしかなかった。不本意ではあるがだ。
「そして実は父上ものう」
「そういえば殿は」
「馬に乗る
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ