第三十一話 尾張への帰り道その九
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どうするのかをだ。それをさらに話す。
「その為にも今川が来る場所を念入りに調べておく」
「そうしてそのうえで」
「今川を迎え撃つ」
「そうされますか」
「そうじゃ。そうする」
また言う信長だった。
「戦の前に。よく調べておくぞ」
「はい、それでは」
「そうしましょう」
「まずはそれですな」
「今川との戦い、どうなるかじゃ」
信長はそのことにだ。かなりの重点を置いていた。
それでだ。今も話すのだった。
「勝つことは前提じゃ」
「勝たなければ終わりですな」
「それだけで」
「そうじゃ、まさに終わりじゃ」
これは最早絶対のことだった。やはり勝たなければ何にもならない。破れば滅びる、今の織田家はそうした状況にあった。
しかしだ。それに加えてなのだった。
「万全の勝ちでなければならんのじゃ」
「その勝ち方もまた」
「問題となりますか」
「わかっておくことじゃ」
信長はまた言うのだった。
「勝ち方もな」
「ううむ、今川との戦」
「尋常なものにはなりませぬな」
「一体どういった戦になるか」
「とんと見当がつきませぬ」
「とにかく今は尾張に戻る」
信長の言葉はここでは先決だった。
「そうするぞ」
「はい、それでは」
「今より」
こうしてだった。信長達は尾張に戻るのだった。その時駿河では。
今川氏真がだ。領民達に気さくにだ。あるものを渡していた。それは。
「これがなのじゃ」
「これがですか」
「馬の病に効く妙薬でごわいますか」
「これが」
「そうじゃ、これじゃ」
こう言ってだ。黒い丸薬を渡していた。そうしてだ。
紙も渡してだ。それについても話すのだった。
「これがこの薬の作り方じゃ」
「これを医者に渡せばですか」
「それでできるのですな」
「そうじゃ。存分に使うがよい」
気さくに笑ってこう話すのだった。
「よいな」
「ここまでのものを教えて下さるとは」
「若殿、宜しいのですか?」
「大事なことなのでは」
「ははは、こうした大事なことは皆が知らねばならん」
氏真はこう言ってだ。それはいいというのだった。
そしてだ。こうも話した。
「病気の馬が減ればそれだけ国がよくなるではないか」
「その通りですが」
「だからでございますか」
「それで我等にも」
「教えて下さいますか」
「そうじゃ。だからじゃ」
それでだというのである。
「だから気兼ねするでない」
「わかり申した。それでは」
「有り難く」
「他の者にも教えるのじゃぞ」
氏真はこう言うのも忘れなかった。そこまでだ。
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