第三十一話 尾張への帰り道その一
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第三十一話 尾張への帰り道
尾張に戻る信長一行。その中でだ。
木下がだ。笑いながらこんなことを一同に話していた。
「いや、馬も何とか」
「慣れてきたか?」
「そうなってきたか?」
「うむ、何とかのう」
こう話すのであった。その一同に対してだ。
「最初はどんなものかと苦労しておったがのう」
「そういえば猿は生まれてからずっと馬に乗ってはおらんかったな」
山内が彼の傍に来て話す。彼の馬は中々上手い。
「そうじゃったな」
「左様じゃ。馬に乗ったのは将になってからじゃ」
こう山内に話すのだった。
「それまで。馬なぞとても」
「そうじゃな。馬に乗るとなるとな」
「大層な身分の方か。それか騎馬隊でもなければじゃ」
乗るようなものではなかった。馬は高価なものだからだ。
「わしみたいな身体の小さい者が騎馬隊にはのう」
「なれんな」
「それは絶対にな」
「なれるものではない」
「猿のその身体ではのう」
小柄なその身体ではだ。確かに騎馬隊は無理だった。木下の身体は小柄で痩せている。しかも足も長いというものではなかった。
「騎馬隊は無理じゃな」
「足軽じゃな」56
「それしかないわ」
項垂れた顔を作ってみせてだ。木下は話すのだった。
「わしはのう」
「そうじゃな。猿はのう」
森長可もその木下に話す。
「馬はどう見ても合わんわ」
「馬と猿は相性がよかったとおもうがな」
今言ったのは蜂須賀だ。ここでもやや木下を庇う。
「それでもじゃ。実際はな」
「猿は猿でも随分と変わった猿だからのう」
森はここで笑った。そのうえで木下を見て話すのであった。
「どっちかというと馬や刀より頭を使う方が得意な猿だからのう」
「そうじゃな。猿は頭じゃな」
蜂須賀もそれはその通りだというのだった。
「どっちかというとまさにそうじゃな」
「弓も槍も使えぬしな」
実は木下はそうしたことはまるで駄目なのだ。刀でさえ下手なのだ。つまり武芸に関してはだ。褒められるところがないのである。
「しかし頭を使えばのう」
「これで小才があるからのう」
「頭があれば何でもできるぞ」
木下も誇らしげにそれを話す。
「あとは女房さえいればじゃ」
「おお、そういえば御主あれだったな」
前田がここで楽しそうに言ってきた。
「何でも住んでおる屋敷の」
「うむ、足軽大将になって何とか家を持てたぞ」
笑ってだ。前田にも応える木下だった。彼もようやく家を持てるようになったのである。足軽大将になってその俸禄によってだ。
「それでじゃ。向かいの」
「ねねじゃな」
「何じゃ、知っておるのか」
「まつの友達だからのう、そのねねが」
前田は笑いながら話していく。
「よう知っ
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