第二十八話 都にてその九
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「そうそう遠くまで出られぬし力も使えぬ」
「しかし都にいればですな」
ここで言ったのは村井であった。
「その場合は」
「やはりああしてですか」
「常に意識せねばなりませんか」
「そうじゃ。つまりじゃ」
その場合はだ。どうかというのである。
「天下を考えると都は欠かせぬな」
「はい、どうしてもですね」
「都はどうしても外せません」
「何があろうとも」
「そういうことじゃ。天下を考えると延暦寺はどうしても何とかせねばならん」
信長のその言葉が強くなる。
「わかったな、そのことが」
「寺社の問題もですか」
「それも外せませんか」
「どうしても」
「とにかくあらゆることを終わらせねばならんからな」
信長の言葉は強い。
「これまでの天下のあらゆるしがらみをじゃ」
「しがらみですか、終わらせるのは」
「それでございますか」
「それをわかっておくことじゃ」
こう話してだった。信長と家臣達はそのまま将軍の下に向かう。そうして城に入るとだ。すぐにあの二人が出て来て応対するのであった。
「おお、御主達はあの時の」
「道三殿と会った時の」
すぐにだ。柴田と丹羽が言った。明智と細川が来たのだ。
そしてその二人がだ。笑顔で彼等の前に出て来てそうして言うのだった。
「お久し振りです」
「どなたもお元気そうで何よりです」
「うむ、御主達もな」
「御元気そうで何よりですな」
柴田と丹羽も笑顔で応える。その他の者達もだ。
それぞれ笑顔で二人の前に出る。そして信長もであった。
家臣達の最後に来てだ。二人に言うのであった。
「元気そうで何よりだな」
「織田殿もです」
明智はその笑顔で信長に応えた。
「ご活躍のことは聞いております」
「ほう、わしの悪戯のことをじゃな」
「いえいえ、それは」
「ふむ、それは聞いてはおらぬか」
「そうしたことは聞いてはいません」
こう正直に話すのだった。
「ですが」
「ですが。何じゃ?」
「尾張では見事な政を為されているそうで」
「そのことは聞き及んでおります」
明智だけでなく細川もそのことを話してきた。
「尾張は見違えるまでになったとか」
「我々が行った時よりも」
「ははは、そんなに変わってはおらんぞ」
信長は彼等のその言葉をまずはこう笑って受け流した。
「あまり長い時も経ってはおらぬしな」
「いえ、かなりのものだとか」
「そうだと聞いていますが」
「まあそこまで言うのならじゃ」
信長はその彼等の話を今度は受けたうえで返した。
「一度尾張に来てみるか」
「尾張にでございますか」
「再び」
「そうじゃ。来てみるか」
こう二人に声をかける。
「気が向けばな」
「左様ですな。時ができれば」
「その時にでも」
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