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戦国異伝
第二十八話 都にてその六
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 佐久間がだ。ゆっくりと口を開いてだ。こう主に対して問うた。
「ですが殿」
「何じゃ牛助」
「延暦寺は護国の寺です」
 まずはそこから話すのだった。
「伝教太師が開山しそれ以来長い歴史と多くの高僧を出している寺ですが」
「そうであるな」
「その寺をでございますか」
 こう信長に問うのであった。
「いざとなれば」
「伝教太師の頃は確かに立派じゃった」
 その佐久間に対してだ。信長はまずは静かに述べた。
「そして長い歴史があるのも確かじゃ」
「はい」
「そして多くの高僧を生み出しまた数え切れぬだけの宝もある」
「左様でございます」
「そなたの言うことも一理ある」
 ここまで話した。佐久間の話を聞いたうえでだ。
 そしてそのうえでだ。信長はあらためて言った。
「しかしじゃ。今はどうじゃ」
「今はでございますか」
「そなたは延暦寺の歴史は知っておるな」
「はい、多少は」
 謙遜してこう述べるが実際には延暦寺のことはかなり知っていた。佐久間は織田家においては博識ということでも知られているのである。
「ではじゃ。延暦寺が平安の頃より何をしてきたかも知っておるな」
「僧兵でございますか」
「そうじゃ。あの連中がどれだけのことをしてきた」
 信長は佐久間に対して問うた。
「知っておろう」
「そして妻帯に肉食をでございますか」
「その延暦寺に徳があるか」
「そう言われますと」
「ないな」
 佐久間の目を見て問うた。
「そうじゃな」
「否定できませぬ」
 佐久間は顔を俯けさせた。そのうえでの言葉だった。
「それはやはり」
「そうじゃな。延暦寺が行いを正せばそれでよいがじゃ」
「そうでなければでございますか」
「そうじゃ。その場合は仕方がない」
「左様でございますか」
 ここまで聞いてだ。頷く佐久間だった。
 そうしてだった。彼はあらためて言ったのだった。
「延暦寺の徳は最早ありませぬか」
「残念なことにじゃ。坊主は潔白でなくてはならんが」
「しかしそうはいきませぬか」
「そうじゃ。それが現実じゃ」
「難しいものでございますな」
 佐久間のその声が唸っていた。そうした声になっていた。
 そんな話をしていた。その次の日であった。
 信長達が将軍の元に向かっていた。その時だった。
 一行の前にだ。僧兵達がいた。見れば神輿を担いでいる。佐久間がそれを見て言った。
「強訴をしておるな」
「そうでござるな」
「そうしてそのうえで要求を飲ませますか」
「平安の頃からですな」
「ああしているのは」
「昨日言ってすぐじゃな」
 信長も馬上でだ。それを見て言った。
「いい時にと言うべきか」
「そうですな。しかし我等の進む先にいるとなると」
「どうされますか、それで」

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