第二十八話 都にてその五
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「力のある豪商や座の力を削ぐ」
「そうしておりますから」
「それが全て国を栄えさせ織田の力も強めるのじゃ」
検地も楽市楽座もだ。そうした意味でまさに一石二鳥の政策だったのである。信長は尾張をそうして万全に治めているのである。
そしてそのうえでなのだった。
「開墾に治水に道に町作りでござるな」
「尾張はまさに見違えました」
「それは国人や商人も抑えたからこそ」
「だからでございますか」
「敵は外だけでなく中にもおる」
家臣の裏切りをさすことの多い言葉だがここでは意味が違っていた。
「そういうことじゃ」
「その為の政でもありましたか」
「成程、ただ政をして国を富ますだけではない」
「そうしたこともでござったか」
「そうじゃ。国の中はそうしていく」
治める国の中はというのであった。
これで信長の話が終わりかというとだ。そうではなかった。
ここでだ。彼はこれまで以上に顔を曇らせてだ。こんなことを言ったのであった。
「もしやな。一番厄介な相手やもな」
「一番といいますと」
「それは一体?」
「何者でございますか」
家臣達にはだ。これがわかりかねた。
「厄介とは」
「大名や国人よりもとは」
「その相手は」
「坊主じゃ」
それだというのであった。
「あの連中じゃ」
「では延暦寺や本願寺」
「ああした者達でございますか」
「僧兵達や一向宗だと」
「立ちはだからぬのならよい」
その場合はだ。いいというのであった。
「だが。立ちはだかるならばじゃ」
「その場合はでございますか」
「厄介だと」
「そう仰るのですか」
「そうじゃ。加賀を見よ」
守護が倒されだ。今では百姓の持ちたる国と言われている。その実態は一向宗の僧達のものとなっている。そうした国になっているのだ。
「その周りの越前にしてもじゃ」
「一向宗に散々にやられておりますな」
「あの上杉もてこずっておりますし」
「特にこの近畿は」
石山にその本願寺がある。彼等の勢力が最も強い場所でもあるのだ。
「本願寺に延暦寺」
「興福寺もありますな」
「寺が多くあります」
「その者達が相手になると厄介じゃ」
また言うのであった。
「坊主はな」
「僧兵だけではなくですか」
「一揆もですか」
「確かに考えていきますとですな」
「厄介な者達です」
「そうじゃ。だが必要とあらばじゃ」
どうかとだ。信長はさらに話していく。
「あの者達が相手でもじゃ」
「戦われますか」
「そうされるのですか」
「そうじゃ、わしはやるぞ」
信長はその決意も口にしてみせた。
「わしが天下の為に為すことに延暦寺や本願寺が立ちはだかるならばじゃ」
「その時はでございますか」
「あの者達とも戦われると」
「延暦寺
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