第二十七話 刺客への悪戯その六
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「どうじゃ。御主等の狙う者はここにおるぞ」
「くっ、それでは」
「どうする?」
「ここで討つか?」
「そうするか」
刺客達は戸惑いながらもそれぞれ顔を見合わせて話す。彼等は大きく俺を取ってしまっていた。それは否定のしようがなかった。
戸惑いながらも立ち上がろうとする。だが、だった。
信長はここでさらにだ。刺客達に対して言った。
「ほう、わしに向かって来るか」
その刀の柄に手をやっての言葉だった。
「ではやるか」
「うう・・・・・・」
怯んだ。しかしすぐに気を取り直してこう話し合う彼等だった。
「相手は二人だ」
「我等は十二人」
「やれるか」
「大丈夫か?」
「数を頼めば」
「それで」
やれるのではないかと思った。それでもだった。
彼等は完全に流れを掴まれていた。信長の思うままに進められている。現に今も立ち上がることすらできない。全員戸惑ったままだ。
その彼等に剣を抜こうとする信長だった。
そしてだ。こう彼等にまた告げた。
「さあ、どうする」
「斬るか」
「さすれば褒美は思いのままだ」
「しかし。これでは」
「前に出ても」
「御主等を全て斬ることなぞ容易い」
信長は余裕の笑みでこうも告げた。
「わし一人でもな」
立ち上がろうとするとその間に斬られることは間違いなかった。信長の全身から覇気が起こり彼等を圧倒している。最早どうしようもなかった。
それでだった。信長はここで止めを刺してきた。
「来ぬのか!」
「うっ!」
「来ぬのならこちらから行くぞ!」
こう叫ぶとだ。彼等は完全に固まってしまった。最早動くことはできなかった。
その彼等を見てだ。信長は勝ち誇った声で言った。
「ふん、一人も動けぬようじゃな」
「くっ、何という男だ」
「まさか我等の前に自分から現われるとは」
「何という肝の持ち主だ」
負け惜しみだった。それ以外の何者でもなかった。
だがそれを言わずにはいられずだ。彼等は窮してしまっていた。
信長は彼等が完全に動けなくなったのを確かめ。その彼等にこの言葉を告げたのであった。
「美濃の大男に伝えておけ」
「義龍様に」
「何と」
「御主等程度の刺客ではわしを倒せぬとな」
伝えろというのはこのことだった。
「それこそ飛び切りの刺客を出して来いとな」
「・・・・・・・・・」
刺客達は項垂れ沈黙してしまった。信長の奇襲と気迫の前にだ。何もできなかった。こうして堺での刺客達は信長自身が退けたのだった。それも刀を抜くことなく。
刺客達は何も出来ず信長が悠々と帰るのを見届けるだけだった。そうして信長はだ。自分達の宿への帰り道でだ。こう佐々に話すのだった。
「これでよしじゃな」
「もう一度刺客が来るかも知れませんが」
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