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戦国異伝
第三話 元服その八
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「美濃を攻めるのも結局のところあの国が欲しいのだ」
「はい、その通りです」
 今話したのは林美作であった。彼は兄の傍に控えている。
「美濃は豊かであります。ですから」
「ふん、しかしだ」
 だが、という口調だった。信長は侮蔑したようにして話した。
「朝倉は所詮一人でもっている家だ」
「朝倉宗滴」
「あの老人ですか」
「そうだ、あの男だけだ」
 吉法師はここでもばっさりと言い捨てていた。
「当主の朝倉義景なぞ恐れることはない」
「では斉藤道三を倒すことはできませんな」
「今の朝倉では」
「出来る筈がない。しかし浅井の後ろにいるのは確かだ」
 それはだというのだ。吉法師は朝倉を大して強くは見ていなかったがそれでもこのことははっきりと認識して述べていた。
「浅井の家は何かと興味深いな」
「浅井はですか」
「あの家は」
「そして武田と長尾だ」
 吉法師の顔がさらに険しくなった。
「あの両家、いや武田晴信と長尾影虎は恐ろしい男だ」
「はい、どちらも今恐ろしいまでに勝ちを重ねています」
 丹羽が告げてきた。
「武田は信濃を手中に収め長尾は越後を完全に掌握しました」
「そして双方共川中島で戦っているな」 
 吉法師は両者の戦いのことも知っていた。
「激しい戦いになっているな。しかもその間にも両者は力をつけている」
「政が見事です」
 村井が厳かな口調で述べてきた。
「特に武田は戦で攻めたその土地もよく治めています」
「ただ戦ができるだけではないというのですね」
 池田がその村井に対して問うた。
「つまりは」
「左様、武田も長尾も多くの人を備えている」
 彼等もだというのだ。
「武田と長尾、恐ろしい家だ」
「それと北条に毛利だな」
 吉法師の言葉だ。
「近畿の三好も気になるがこの二つの家も強くなるだろうな」
「相模の北条と安芸の毛利」
「その二つもですか」
「そうだ、天下は今まで小さく乱れていたがそれが変わる」
 ここでだった。居並ぶ者達に対して告げた。
「大きな力を持つ家が幾つか出て来るぞ」
「そうなりますか」
「これからは」
「そうだ。そしてそれに対して我が家はだ」
 織田家はというのだ。
「まずは国を治める。よいな」
「はい」
「そうしてですか」
「戦に勝っていく。そうするぞ」
「さし当たってですが」
 坂井が言ってきた。
「殿、いよいよです」
「大膳、元服だな」
「はい、そうです」
 まさにそれだというのだった。
「それです」
「わしもいよいよ元服か」
 吉法師の顔は妙に楽しそうであった。まるで待ちに待ったものを手に入れるかの様であった。
「面白いな」
「織田家の多くの者が来るでしょう」
「あの織田信友の手の者もまた」
「ほう、あそこ
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