第二十六話 堺その一
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第二十六話 堺
遂にだ。信長達は堺に入った。
そこはまさに別世界であった。家臣達がそれぞれ驚いた顔で周りを見ながら言う。
「いや、噂以上ですな」
「ここまで大きな町とは」
「何と人の多い」
「しかも髪や目の色が違う者まで」
「ふむ。どうやら」
信長も驚きこそしていないが持ち前の好奇心で堺を見回している。そうしてそのうえでこんなことを言うのだった。
「あれが南蛮人じゃな」
「西の方から来たという」
「その」
「そうじゃ。あの者達がのう」
やけに背が高く縮れた赤や茶、金色の髪に青や緑の目。それに肌は白く鼻が高い。髭が濃く彼等とは全く違う服を着ている。信長はその彼等を見て言うのであった。
「その南蛮人よ」
「明の者もいますが」
「あれですな」
彼等は確かに服装は違うが姿形はほぼ同じだった。だから彼等には特に何も思わないのだった。
「しかし。本当に南蛮人がいるとは」
「この賑やかな町の中で」
「とりわけ異彩ですな」
「いや、全く」
「しかし堺は」
その堺についてまた話される。
「建物も違いますな」
「とにかく町人が多いですな」
「しかも店が多い」
彼等の左右には多くの者達が行き交い店が立ち並んでいる。どの店も大きく門構えも立派である。そしてそこには潮の香りもした。
「この町、一体どれだけの富があるのか」
「それも気になりますな」
「何でも商人達が治めているとか」
「そうよ、ここはそうじゃ」
信長は商人達が治めている話にも述べた。
「そこも尾張とは全く違うのう」
「商人が治めるとは」
「それはまた面妖な」
「確かに」
家臣達はこのことにいぶかしむのであった。
「幾ら聞いてもわかりませぬ」
「そうしたことができるとは」
「いや、全く」
「誰でもそれはできるぞ」
しかしだ。信長はここでこう彼等に言うのであった。
「現に昔はじゃ」
「昔?」
「昔といいますと」
「公卿が政をしていたではないか」
信長が言うのはその頃の話だった。
「今も坊主が政をしたりしているではないか」
「そうだというのですか」
「それは」
「そうじゃ。要は政を知っているかどうかじゃ」
それだというのである。
「知っておればできるし知らねばできぬ」
「では武士でもでござるな」
「政を知らなければできぬ」
「左様でござるか」
「おお、そういえば」
ここで声をあげたのは慶次であった。それも実に楽しそうにだ。
「わしはそうしたことは嫌いで」
「わしもじゃ」
今度は可児であった。彼もなのだった。
「政のことはわからぬ。わしはあくまで槍だけよ」
「風流は好きだがのう」
慶次は笑いながら話す。
「しかし政なぞ。わしには全
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