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戦国異伝
第二十五話 堺へその十一
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「一時は兵を動かしていましたが」
「しかしそこを引いてですな」
「はい、それ以降これといって動きませぬ」
 そうだというのである。
「ただ、今川はです」
「あちらはですな」
「どうやら。やがて動くようです」
「ふむ」
 それを聞いてだ。平手の目が鋭くなった。
「その全軍を以てですな」
「その兵はおそらく二万五千」
 森は兵の数まで述べた。
「それだけの数で」
「二万五千ですか」
 その数を聞いてだ。平手は神妙な顔になった。そのうえで、である。
 森に対してだ。彼もまた数を話しに出すのだった。
「それに対して我々は一万五千でございます」
「数においては大きく差が開いています」
「一万もの差が」
「これは大きいですな」
「全くです」
 二人共だ。それはよくわかっていた。一万もの差はだ。容易に覆せるものではない。
 しかしだ。その容易でないことについてもだ。二人は話すのだった。
「しかし地の利はこちらにあります」
「はい、我等に」
 それがその容易ではないものだった。まさにそれがだ。
「尾張は我等の地」
「隅から隅まで知っております」
 このことがだ。実に大きいのだった。
「さすれば。一万の差もです」
「覆すことが可能ですな」
「例え多くの兵を失おうとも」
 平手はこのことは覚悟していた。やはり数の差が大きかった。
「そうしましょうぞ」
「是非共」
「しかし」
 だが、だった。平手はふと思ってだ。それでこんなことを話すのだった。
「殿は。果たしてそんな悠長なことを考えられるのか」
「それですな」
「はい、あの殿ですからな」
 ある意味において己の主をよくわかっているからこその言葉だった。
「派手にいかれるやも」
「そして兵の数をできるだけ減らさぬようにされる」
「そうされるのでは」
「確かに」
 平手の言葉にだ。森も頷くのだった。そして彼はこう言うのであった。
「殿は戦われるからには。損害はできるだけ少なくされますからな」
「そして敵の虚を衝かれます」
「だとすると」
「その今川の時もですな」
 平手は真剣な面持ちで述べた。
「それを狙われるかと」
「ううむ、言葉ではたやすいですが」
 慎重派の森はだ。平手の話を聞いて難しい顔で述べた。
「ですがそれを実際にするとなると」
「やはり困難ですな」
「困難どころでは済みませぬ」
 楽観していなかった。彼は現実を見て述べているからこそだ。
「何しろです。今川にはあの太原雪斎がおります」
「あの今川の知恵袋が」
「今まで織田も煮え湯を飲まされております」
 三河での戦いのことだ。そのことは彼等は決して忘れていないのだ。
 そのことを念頭に置いてだ。二人は話すのであった。
「あの男がまずおります」
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