第二十五話 堺へその八
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「それがし、何があってもそれはなりませぬ」
「うむ、そうせよ」
「しかし。大学殿もです」
彼はだ。真摯な顔でこう述べるのであった。
「それは決して」
「死ぬなというのじゃな、わしも」
「はい、例え何があろうとも」
「そうじゃな。傍にそなたがおれば大丈夫じゃな」
佐久間盛重は笑顔になって秀長に話した。
「それに猿がおれば万全じゃ」
「何と、それがしもですか」
「そうよ。そなたの知恵は役に立つ」
それを見ての言葉であるのだ。
「だからこそじゃ」
「ううむ、では大学殿が戦の場に立たれるその時はです」
木下は腕を組んでだ。こう言うのであった。
「それがしもお供します」
「そうしてくれるな」
「はい、そして何があろうとも生き残りましょうぞ」
「それがしもでございます」
秀長もであった。
「戦の時は。是非共」
「そなた等二人がいればそれでもうことはなるのう」
佐久間盛重は笑っていた。そうして二人の言葉に応えていた。
「無事な」
「そうじゃな。大学よ」
信長はここでも話を聞いていた。そのうえで彼に声をかけた。
「今度そなたが戦の場に出る時はじゃ」
「この二人もですな」
「そうじゃ。連れて行け」
こう彼に告げた。
「その時はな」
「わかりました。それでは」
彼も主のその言葉に頷いて答えた。
「そうしてですな」
「死ぬな」
その連れて行けという理由はこれに他ならなかった。
「絶対にじゃ。よいな」
「はっ、承知しております」
「死ぬ必要のない者が死ぬことはない」
信長の言葉はこれまで以上に澄み切ったものになっていた。
「そうした者は生きなければならぬ」
「左様ですか」
「そうだと」
「わしとて必要ならば殺す」
戦国に生きる者としてだ。これは当然の言葉だった。そうした時代だからだ。
「だが。別にそうではない場合は無闇に殺めることもない」
「確かに。それで勘十郎様もでしたし」
「だからこそですな」
「そうじゃ。大学も同じじゃ」
また彼を見ながらの言葉だった。
「下手に死んではならんぞ」
「わかり申した」
「他の者もじゃ」
ここで信長は他の面々にも同じ言葉を告げた。
「そう簡単に命を粗末にするでないぞ」
「わかり申した、では」
「その様に」
「民を害することとそれは決して許さぬ」
信長は善政でも知られている。確かに裁きは苛烈である。だがそれだけに悪人が必ず罰されしかも田畑も町もよく治め水も同じだ。これこそまさに善政である。
「織田がどれだけのものになろうともじゃ」
「して殿」
信長の話が一段落したところで滝川が言ってきた。
「そろそろ河内に入りますが」
「そこから和泉じゃな」
「はい、その堺のある和泉です」
まさに
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