第二十五話 堺へその六
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「いや、殿は見事でござる」
「何、これは武田もしておる」
その武田もだというのだ。
「あの男の政を見るとじゃ。色々学べる」
「武田ですか」
「あの者でございますか」
「武田は確かに戦に強い」
その強さをだ。信長は戦わないうちからよく知っていた。
「しかし本当に凄いのはじゃ」
「政ですか」
「それでございますか」
「そうじゃ。それが一番凄いのじゃ」
こう家臣達に話すのだった。
「甲斐だけではなく信濃まで見事に治めておる」
「信濃は元々様々な国人達がいましたが」
「それを武田の下に一つにしてですか」
「そのうえで」
「田畑も町も整えているだけではない」
それ以上のものをだ。信玄はしているというのだ。
「民の心も掴んでおる」
「それも信濃の民までもですね」
「その者達も」
「見事なまでに」
「恐ろしいまでに見事よ」
そこまでだというのである。
「武田は。これからさらに強くなるぞ」
「戦国最強のあの軍団がですか」
「さらに」
「今まで以上に」
「強い軍を支えるのはよい国よ」
言い換えればそれがあってこその強い軍だというのだ。
「今川にしろそうじゃ。あの公家眉は政は好きじゃな」
「戦はあまり聞きませぬが政は確かに」
「中々見事です」
「あの公家眉も政が好きですな」
義元のことに他ならない。彼が公家の格好をしていることからそうして呼んでいるのだ。
尚義元は手足が短く胴が長い。その為馬に乗ることが苦手でそれがそのまま彼を今一つ戦に対して弱いところを作り出しているのも知れない。
「今川の兵は弱いですが」
「それでも豊かな国があればですか」
「戦えると」
「左様じゃ」
また答える信長だった。
「そういうことじゃ」
「ううむ、政は軍も作る」
「そうなりますか」
「つまりあれですな」
慶次が明るい声で言ってきた。
「腹が減っては戦ができぬですな」
「おお、確かに」
木下が慶次の今の言葉に笑顔で頷く。
「飯がなくては戦どころではありませぬ」
「そうじゃ。猿殿もわかっておるではないか」
大柄な慶次が小柄な木下の横に来て言う。
「そういうことじゃ」
「確かに。まず食わなければ話になりませぬ」
「左様、それを考えるとじゃ」
「飯があれば兵は強くなる」
「その通りじゃからのう」
「それではですな」
木下は慶次に合わせながらさらに言ってみせた。
「常に飯を適度な場所に用意して進ませることもいけますな」
「適度な場所にか」
「左様でござる。兵が昼飯を食う場所にあらかじめ飯を用意しておく」
木下はここでこんなことを言うのであった。
「これは如何でしょうか」
「おい、猿」
それを聞いてだ。川尻が顔を顰めさせて彼に言ってきた。
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