暁 〜小説投稿サイト〜
戦国異伝
第二十四話 国友その九
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話

「天下の為にな」
「ああした僧兵達はなりませんか」
「やはり」
「そう御考えなのですね」
「そうじゃ。まあ今は尾張一国じゃからよいがな」 
 尾張には比叡山や本願寺程強い寺社の勢力はない。それは信長にとっては有り難いことだった。それを踏まえて話すのだった。
「しかしやがてはじゃ」
「近畿に出ればですな」
「やがてですな」
「嫌でも彼等と対します」
「その時は」
「そうじゃ。そうする」
 こう話すのであった。話を聞く家臣達も真剣だ。そしてその真剣な面持ちでだ。彼等は話すのだった。
「天下泰平は何があっても果たさなければならぬものだからな」
 こう話すのであった。そしてであった。
 信長は家臣達を連れて国友村から都に向かう。彼等は順調に進んでいた。
 信長が国友に行ったことは義龍の耳に入った。彼はそれを聞いてこう家臣達に話すのだった。
「鉄砲じゃな」
「それですか」
「織田が国友に入ったのはそれを手に入れる為なのですね」
「その為に」
「ふん、小賢しい」
 義龍はその信長について忌々しげに述べた。
「わざわざ鉄砲をそうして手に入れるとはのう」
「しかし織田がここでまた鉄砲を手に入れては」
「何かと厄介ですな」
「全くです」
 家臣達はそれを言うのだった。
「今のうちに何とかしたいですが」
「では殿、刺客達ですが」
「このままですね」
「そうだ、狙わせる」
 他ならぬ信長の命をというのである。
「そして隙あらば」
「尾張自体をですね」
「狙われますか」
「ここは」
「そうじゃ。狙うぞ」
 実際にだ。義龍はそれを考えていた。真剣に狙っていた。
「よいな。隙があればじゃ」
「では兵は何時でもですね」
「出せるようにしますか」
「まことに隙があれば」
「そうされますね」
「そうじゃ。そうする」
 こう言ってであった。彼等は尾張を狙おうと考えていた。しかしだ。
 尾張はだ。その隙がなかった。稲葉山にだ。家臣達が次々に戻って義龍に伝えるのだった。
「国境には兵が集まっております」
「そして隙を見せませぬ」
「蟻一匹は入られませぬ」
「留守は誰だったか」
 義龍は尾張に残っている者が誰なのか考えて述べた。
「織田の家臣の間で誰が残っておる」
「はい、平手と森の二人です」
「あの二人の様です」
「厄介な者達じゃな」
 義龍はその二人の名前を聞いてここでも忌々しげに述べた。
「平手は織田家においてよく知られおるしな」
「左様ですな。政は万全です」
「そして戦の森ですか」
「あ奴は最初我が家におった」
 美濃の斉藤家にである。仕えていたのだ。
「しかし織田に流れてじゃ」
「そうして今に至る」
「左様ですか」
「そうじゃ。派手さはないが手堅い戦をする」
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ