第二十四話 国友その九
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「天下の為にな」
「ああした僧兵達はなりませんか」
「やはり」
「そう御考えなのですね」
「そうじゃ。まあ今は尾張一国じゃからよいがな」
尾張には比叡山や本願寺程強い寺社の勢力はない。それは信長にとっては有り難いことだった。それを踏まえて話すのだった。
「しかしやがてはじゃ」
「近畿に出ればですな」
「やがてですな」
「嫌でも彼等と対します」
「その時は」
「そうじゃ。そうする」
こう話すのであった。話を聞く家臣達も真剣だ。そしてその真剣な面持ちでだ。彼等は話すのだった。
「天下泰平は何があっても果たさなければならぬものだからな」
こう話すのであった。そしてであった。
信長は家臣達を連れて国友村から都に向かう。彼等は順調に進んでいた。
信長が国友に行ったことは義龍の耳に入った。彼はそれを聞いてこう家臣達に話すのだった。
「鉄砲じゃな」
「それですか」
「織田が国友に入ったのはそれを手に入れる為なのですね」
「その為に」
「ふん、小賢しい」
義龍はその信長について忌々しげに述べた。
「わざわざ鉄砲をそうして手に入れるとはのう」
「しかし織田がここでまた鉄砲を手に入れては」
「何かと厄介ですな」
「全くです」
家臣達はそれを言うのだった。
「今のうちに何とかしたいですが」
「では殿、刺客達ですが」
「このままですね」
「そうだ、狙わせる」
他ならぬ信長の命をというのである。
「そして隙あらば」
「尾張自体をですね」
「狙われますか」
「ここは」
「そうじゃ。狙うぞ」
実際にだ。義龍はそれを考えていた。真剣に狙っていた。
「よいな。隙があればじゃ」
「では兵は何時でもですね」
「出せるようにしますか」
「まことに隙があれば」
「そうされますね」
「そうじゃ。そうする」
こう言ってであった。彼等は尾張を狙おうと考えていた。しかしだ。
尾張はだ。その隙がなかった。稲葉山にだ。家臣達が次々に戻って義龍に伝えるのだった。
「国境には兵が集まっております」
「そして隙を見せませぬ」
「蟻一匹は入られませぬ」
「留守は誰だったか」
義龍は尾張に残っている者が誰なのか考えて述べた。
「織田の家臣の間で誰が残っておる」
「はい、平手と森の二人です」
「あの二人の様です」
「厄介な者達じゃな」
義龍はその二人の名前を聞いてここでも忌々しげに述べた。
「平手は織田家においてよく知られおるしな」
「左様ですな。政は万全です」
「そして戦の森ですか」
「あ奴は最初我が家におった」
美濃の斉藤家にである。仕えていたのだ。
「しかし織田に流れてじゃ」
「そうして今に至る」
「左様ですか」
「そうじゃ。派手さはないが手堅い戦をする」
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