第二十三話 上洛その九
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「特に気になるのは」
「何でしょうか、それは」
「気になるものとは」
「長島じゃ」
そこだというのである。
「長島じゃな」
「あそこですか」
「そういえばあそこは」
「一向宗の根城ですな」
「伊勢の」
「わしは一向宗とはこれといって関わりが無い」
少なくとも今はだった。信長は一向宗とは縁がなかった。だがそれでもだった。その長島に入って見てだ。こう言うのだった。
「しかしな」
「あの一向宗の数ですか」
「それに物々しさも」
「わしの調略にも何も言ってはこぬが」
信長も彼等には手出しをしていない。国人や守護の家臣達への工作はしていてもだ。それでも一向宗には手出ししていないのだった。
「それでもじゃ。若し奴等とことを構えれば」
「その時はですか」
「厄介だと仰いますか」
「そうだな。長島は尾張にも近い」
それもまた問題だというのである。
「色々と考えておくべきじゃな」
「ううむ、坊主は厄介でござるからなあ」
「特に一向宗は」
「全くでござる」
それはだ。彼等もよく知っていた。今一向宗といえばだ。
「加賀のこともありますし」
「ああして一国を牛耳ってもいますし」
「越前から越後まで荒らし回っております」
「近畿でも力があり申す」
「敵に回せば何かと鬱陶しいかと」
「そうよの。しかしじゃ」
それでもだとだ。信長は顔を顰めさせたのだった。
そうしてだ。彼はこう言った。
「わしの天下への道に立ちはだかるならばじゃ」
「その時はですか」
「では」
「倒す」
そうするとだ。一言で言った。
「わしの前に立ちはだかるならばじゃ」
「言い換えれば相手が誰であっても」
「そうされるというのですか」
「倒されると」
「そういうことでもある」
信長もそれを否定しなかった。
「倒すぞ」
「わかりました。では」
「その時は」
「我等も」
家臣達もそれぞれ応える。言わぬ者は一人もいなかった。
「及ばずながら力を」
「そうさせてもらいます」
「ははは、共に楽しもうぞ」
これが信長の返答だった。
「その時はな」
「楽しむのですか」
「そうせよとですか」
「傾いて楽しんでこそじゃ」
まさに信長の言葉であった。彼のだ。
「面白いではないか」
「ううむ、そう言われますか」
「戦や一揆を前にしても」
「そう」
「何度も言うぞ。そして今じゃが」
その今の話もするのだった。
「伊勢から近江に入りそうして都じゃな」
「そうですな。伊賀は通られますか」
「そちらは」
「いや、伊賀は止めておこう」
そちらはだというのだった。信長は首を横に振って述べた。
「あの道は山道ばかりで進みにくい」
「だからでござるか」
「今は」
「そうじゃ。その
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