第二十二話 策には策でその九
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「そなたが残れ」
「それがしがでございますか」
「そなたならば斉藤や今川が今何かしてきてもだ」
対することができる。それでだというのだ。
「だからじゃ。よいな」
「わかりました。それでは」
「残すのはこの二人じゃ」
ここにいる家臣達ではというのであった。
「他の者はわしと共に上洛せよ」
「都ですか」
「我等が」
「都だけではない」
信長はだ。こうも言って笑ってみせてきたのだった。
「そこだけではないぞ」
「といいますと」
「他には」
「その時にわかる」
今ではない。だが確実にだというのである。
「道はもう決めてあるからのう」
「やれやれ、またでござるか」
「殿の悪い癖でございますな」
ここで苦笑いと共に言ったのは丹羽と滝川だった。
「そうしてここぞという時まで隠されて」
「我等を驚かせるのですな」
「そうでなくては何が面白いか」
それを堂々と認めて笑ってみせる信長であった。彼もわかっていた。
「違うか?それは」
「敵を欺くにはまずはですか」
「味方からだと仰るのですね」
「そういうことよ。まあ連れて行くからにはじゃ」
どうかというのであった。信長も家臣達はしかと見ていた。
「決して悪い場所には連れて行かぬ。むしろ」
「むしろ?」
「むしろでございますか」
「よい場所じゃ。これからのことも考えておる」
既に信長は尾張一国だけで終わるつもりはなかった。さらに先を見ているからこそだ。こう家臣達に対して述べるのであった。
「よくな」
「だからこそ我等をですか」
「共に」
「そういうことじゃ。わかったな」
池田と堀にも述べた。
「さすれば。用意ができ次第じゃ」
「都にでござるな」
「そこに」
「公方様も中々面白い方と聞く」
信長は将軍のことも話すのだった。足利義輝のことだ。
「剣の腕はかなりのものらしいな」
「はい、そうです」
「それはかなりのものとか」
今答えたのは佐久間重盛と蜂屋だった。
「免許皆伝にまで至っています」
「剣では天下に並ぶ者は五人といないとか」
「しかし」
ここでだった。山内が袖の中で腕を組んでこう言った。
「果たして公方様がそこまで剣を極められる理由があるのか」
「そうよのう、それは」
「確かにその通りじゃ」
山内の今の言葉に堀尾と中川が応えた。
「公方様ともなれば護る者がおるぞ」
「それも結構な数がな」
「しかしそれで剣をじゃと」
「幾ら乱世とはいえ」
村井と坂井も同じ考えだった。
「公方様ともなればそれよりも兵法の方がよいのではないか」
「そう思うが」
「わしもそう思うがな」
それは信長も同じ考えだというのであった。そしてこう言うのであった。
「身に着けるのならばだ」
「そ
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ