第三話 元服その四
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「わしも何故かはわからんが」
「殿が遠慮されているのでは、それは」
「やはり。平手殿ですから」
「ふむ、そうなのかのう」
吉法師もその政秀を見ながら述べる。
「わしにはそのつもりはないのだがな」
「遠慮されたことは全くありませんがな」
当の平手もそれは言う。
「今まで一度たりとも」
「そうであろうな。わしもそのつもりはない」
吉法師自身もこう返す。
「生まれてから一度もな」
「その通りです。殿は話を聞きませぬ故」
平手の言葉は自然と小言になっている。
「困ったことです」
「わしはそれ以上に爺の小言に困っておるぞ」
吉法師はここでも負けてはいない。
「全く。どうしたものじゃ」
「まあそれはいいとしてです」
「殿、それでですが」
佐久間と林がここで吉法師に声をかけてきた。
「黒母衣衆ですが」
「宜しいでしょうか」
「うむ、まずは筆頭の」
「川尻秀隆でございます」
日に焼けた精悍な顔をした男だった。射抜く様な目に薄い唇をしている。
「宜しく御願いします」
「そなたは鎮吉と申したな」
「はい、そうです」
それが彼の幼名であった。
「その通りです」
「そうだったな。ではそなたは鎮吉という」
「宜しく御願いします」
「そしてだ」
次にはだった。黒母衣衆の中で最も身体が大きく鋭い眉をした男を見た。そのまま素手でも虎を倒せるような猛々しさがそこにはある。
「佐々成攻です」
彼は自ら名乗ってきたのだった。
「宜しく御願いします」
「その幼名は内茂助だったな」
「そうです」
佐々は吉法師のその言葉に応えて頷いてみせた。
「宜しく御願いします」
「そなたもまたその力頼りにさせてもらう」
「有り難き御言葉」
「中川重政」
丸い顔に大きな目の若武者であった。
「幼名は八郎」
「はい」
その若武者中川の返事だった。
「左様です」
「ではそなたをこれから八郎と呼ぶ」
「それでは」
こう話すのだった。そして次にいたのはだ。
「蜂屋頼隆」
「左様です」
佐々程ではないが大きい。彼もまた大柄であった。
「以後お見知りおきを」
「そなたは般若介だったな」
吉法師は蜂屋の幼名も知っていた。
「般若と呼ぶぞ」
「わかりました」
「浅井政澄、織田薩摩守、伊藤長久、山口飛騨、佐脇藤八、毛利長秀、飯尾茂助、長谷川橋助、福島秀勝、渥美刑部丞、猪子一時、織田越前守、加藤弥三郎、黒田次右衛門」
赤母衣衆の他の者達の名が呼ばれる。
「津田隼人正、毛利良勝、伊藤武、水野忠光、松岡九郎次郎。生駒正ノ助、野々村正成、中島主水」
続いて黒母衣衆の者達の名前も呼ばれた。
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