第二十二話 策には策でその六
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「左様、ただ」
「ただ、何じゃ」
「少しばかり術が使えるだけでございます」
「そしてその術でか」
信行はここでようやく立ち上がった。そのうえで彼に問うのであった。
「それがしをか」
「その通りでございます。勘十郎様に謀叛を起こさせ」
実際にだ。彼自身の口から述べられていく。
「そうして尾張を乱すつもりでした」
「やはりそうであったか」
それを聞いてだ。頷く信長だった。そうしてそのうえでだ。
津々木を見据え今にも斬らんとする姿でだ。また彼に問うのだった。
「それではまた聞こう」
「今度は何でしょうか」
「何処から来た」
次に問うたのはこのことだった。
「そなた、どの手の者じゃ」
「それがしがどの大名の手の者かというのでしょうか」
「大名とは限るまい」
信長は他の勢力の可能性も頭の中に入れていた。国人や町衆、寺社、それに忍の里にとだ。戦国には様々な勢力があるからだ。
それでだ。彼は問うたのであった。
「他にもおるな」
「少なくともどの大名でもありませぬ」
「違うと申すか」
「左様。それがしはそうした場所にはおりませぬ」
「ではどの場所におる」
信長は彼にさらに問うた。
「それを言うがよい」
「さて、何処でございましょう」
「言うつもりはないか」
「多くを言うつもりはありませぬ」
こうだ。津々木は慇懃だが妙に陰のある声で述べるのだった。
「ですがこう申し上げておきましょう」
「何とじゃ」
「それがしは闇の中におります」
こう言うのであった。
「それは申し上げておきます」
「闇とな」
「その通りでございます。ですが」
「ですが。今度は何じゃ」
「残念です。勘十郎様もそれがしに気付かれたようで」
「危ないところであった」
信行も剣を抜いていた。そのうえで彼に対して言葉を返すのだった。
「一度は陥ったが二度はだ」
「ありませぬか」
「そういうことだ。そしてだ」
さらにだとだ。言ってであった。
津々木を斬ろうとする。しかしだった。
信長はだ。その弟を止めて言うのであった。
「待て」
「何故でしょうか」
「この男、尋常な者ではない」
それを見抜いての言葉であった。それでだった。
「迂闊に前に出ては危ないぞ」
「だからですか」
「そうじゃ。ここはじゃ」
「はい、それでは」
川尻が前に出た。そうして主達に話すのである。
「まずはそれがしが」
「鎮吉、そなたは左じゃ」
津々木を左から攻めよというのである。
「わしが右じゃ」
「ではそれがしは」
「勘十郎、そなたは真ん中を受け持て」
彼はそこだというのである。
「よいな、それではじゃ」
「はっ、それでは」
「一人で倒せずともだ」
そこまでわかっていた。こ
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