第三話 元服その三
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「ほほう」
「これはまた」
「見事な者達ですな」
平手だけではなかった。柴田と丹羽も言う。
「これだけの者達が織田家に揃っているとは思っていませんでした」
「又左だけではなかったのですか」
「探せばいる」
これが吉法師の言葉である。
「そういうものだ」
「探せばですか」
「これだけの者達がいるのですか」
「そうだ。それでだが」
ここでだ。吉法師は前田の他にもだ。赤母衣衆の面々を見て言った。
「槍の又左だけではなくだ」
「金森長近もいますな」
「それに原田直政も」
「そなた達の力、期待している」
鋭い目をした筋骨隆々の大男に中肉中背で大きな口を持った男達を見て話す。
「よいな」
「はい、有り難き御言葉」
「それでは」
その金森と原田が頷いてみせた。
「赤母衣衆の力、是非共」
「御覧に入れてみせましょう」
「頼んだぞ。そうだな」
ここで吉法師はさらに言った。
「又左はもうこの名で呼んでいる」
「名前ですか」
「それでは」
「長近、そなたの幼名は五郎八といったな」
まずは金森に対して告げたのだった。
「そうだったな」
「はい、そうです」
「ならばそなたは五郎八と呼ぶ」
そう呼ぶというのだった。
「それでよいな」
「はい、それでは」
「そして直政、かつては壇だったな」
原田の姓が変わったことは既に知っているのである。
「そして幼名は九郎左衛門だった」
「その通りです」
「では九郎だ」
こう呼ぶというのだった。
「それで呼ぶぞ」
「では御願いします」
「赤母衣の者達はわしに仕える間幼名で呼ぶこととする」
家臣を幼名で呼ぶことを好む吉法師らしかった。
「無論黒母衣の者達もだ」
「黒母衣の者達も」
「その様に」
「当然だ。赤母衣の者達もそなた達もそうではないか」
居並ぶ家臣達も見る。ここでは林を見て言った。
「新五郎、そうではないか」
「はい、確かに」
「まあ爺だけは別だがな」
うっすらと笑ってみせて平手も見るのだった。
「どうも幼名で呼ぶ気がせんがな」
「それは何故でございますかな」
「何か幼い時のことが想像できん」
だからだというのだ。
「池田恒興ならばのう」
四角い顔をしたやや小柄な男を見ての言葉だ。
「普通に勝三郎と呼べるし森可成も同じこと」
今度は髪が白くなり顔に深い皺のある老人を見る。
「与三と呼べる」
「我々はですか」
「しかし平手殿はですか」
「どうもそうは呼べぬな」
こう言い続ける。
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