第二十一話 一喝その九
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そのうえで夫を出迎えていた。信長もその言葉に応えて話す。
「いやいや、そなたのお陰でじゃ」
「私のですか」
「そうじゃ。一兵も失わんで済んだ」
このことを帰蝶にも話すのだった。
「まことによいことじゃ」
「左様ですか」
「そうよ。その功見事じゃ」
また妻に話した。
「後で褒美を取らそうぞ」
「褒美をですか」
「そなたが欲しがっていたあの茶器じゃ」
「あれをですか」
「やろう。それでどうじゃ」
「有り難き幸せ」
帰蝶も笑顔で信長の言葉を受けた。こうして彼女は夫からその功を讃えられ褒美も受けたのだった。信長はそのまま清洲に入った。
彼はすぐに家臣達に具足を脱ぐように命じた。そしてであった。
「爺」
「はっ」
「権六」
「はい」
「新五郎」
「こちらに」
三人はそれぞれ信長の言葉に応える。そうしてであった。
信長はその三人にだ。こう告げたのであった。
「これよりあの場所に来るのじゃ」
「畏まりました」
「ではすぐに」
「してじゃ」
信長の言葉はさらに続く。
「無論あ奴もじゃ。よいな」
「あの方もですか。やはり」
「呼ばねば話にならん」
そうだとだ。こう林に述べるのだった。今弟はおらず兄がいるだけである。
「よいな。五人で話すぞ」
「わかりました。では」
林が応えてだった。そうしてだ。
まず信長がその場所に向かい次に平手達であった。彼等が入った場所は。
そこは茶室であった。そこに入ってだった。そのうえでまず信長が茶を淹れはじめた。そのうえで平手達三人に話すのだった。
「そろそろじゃな」
「あの方もですね」
「来られますね」
「まだ剃ってはおるまい」
信長は柴田に顔を向けて問うた。
「それはまだじゃな」
「はい、それはです」
「そうか。それはよいことじゃ」
信長は柴田のその返答を聞いてまずは満足した。
そのうえでだ。三人に茶を渡してだ。こう話すのであった。
「話はこれからじゃからな」
「これからですか」
「この話は」
「あの男、これで終わらぬな」
信長の顔が険しくなった。特に目がだ。
「必ずまた仕掛けて来るぞ」
「必ずですな」
「やはり」
「そうじゃ。一度で諦める男ではない」
これが信長の見たところだった。
「必ずじゃ。また仕掛けてくるぞ」
「勘十郎様にですな」
「そうしてきますか」
「一度で諦めては何にもならん」
そうだというのである。
「だからじゃ。またじゃ」
「そしてですか」
「また乱を起こしますか」
「あの者は」
「おそらくまだ尾張におる」
信長はそれも予測していた。彼は何処までも広く深く見ていた。
「探し出せればそれでよい」
「そしてそこで、ですな」
「あの者を」
「ただ
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