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戦国異伝
第二十一話 一喝その四
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「何ごとも。そういうものですから」
「ですから何を」
 しかし信行の言葉は変わらない。
「仰っているのか。私はあくまで」
「あくまで。何だというのですか」
「尾張の為にです」
 こう言うのであった。
「こうしてあえて兵をおこし」
「尾張の為というのなら」
 しかしだった。帰蝶はまだ彼に言うのであった。
「本来の貴方ならばです」
「私ならば」
「兵をおこすことなぞしません」
 それはないというのだ。
「決してです」
「ですからあえてです」
「あくまでそう言うのですか」
「はい、何か私を疑っておられるようですが」
「疑いは晴れました」
「それは何よりです」
 信行は帰蝶の今の言葉には微笑んだ。しかしであった。
 帰蝶はだ。また彼に言ってきたのである。
「そう、今の貴方はやはり本来の貴方ではありません」
「それが疑いが晴れたと」
「そうです。そして」
 そして、と言ってだった。帰蝶はだ。
 薙刀を足元に置いてだ。弓を取り出してだ。
 それをきりきりと引きだ。一気に放ったのであった。
 放たれた矢は一直線に向かいだ。そして。
 信行の横を通り抜けてだ。そのうえで。
 彼の傍にいた男を貫いた。彼こそは。
「津々木、どうした」
「むう・・・・・・」
 津々木はその右肩を貫かれていた。その肩から血が流れている。
 しかし彼はまだ生きていた。その顔に苦悶の色を浮かべながらも。
 その彼を見てだ。帰蝶は残念な顔で言うのであった。
「外しましたか。失態です」
「まさか私を」
「貴方ですね」
 帰蝶は今度は津々木を見ていた。そのうえでの言葉だった。
「勘十郎殿を操っていたのは」
「!?操っていた!?」
 急にだ。その信行がだ。
 我に返ったような顔になってだ。そうして言うのだった。
「どういうことだ、それは」
「正気に戻られましたね」
「わからない、何故だ」
 その信行はだ。帰蝶の言葉を聞きながら呆然となっていた。
 その顔で周囲を見回しながらだ。こう言うのであった。
「何故私が清洲を攻めている。兄上に叛旗を翻して」
「それは後でお話しましょう。ですが」
 帰蝶は今は信行よりもだ。彼を見ているのだった。
 津々木を見てだ。そうして彼に告げるのだった。
「勘十郎殿を操っていましたね」
「くっ、まさかそのことに」
「次は外しません」
 見据えていた。鷲に似た光を放っていた。
「何としてもです」
「ここは」
「覚悟するのです」
 帰蝶は再び矢をつがえていた。そうしてまた放とうとする。
 しかしそれよりも前にであった。津々木は。
 突如として姿を消した。まるで煙に様に。
「消えた!?」
「まさか」
「一体何処に」
「行ってしまったというのだ」
 帰蝶の
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