第二十一話 一喝その二
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周りにいる旗本達はいぶかしむ。だが何も言えなかった。言えばどうなるか、今の信行の目を見ればそれでわかることだからだ。
その信行が話していく。さらにであった。
「してだ」
「尾張を手に入れられ」
「そのうえでどうするかは」
「またお話しましょう」
津々木はそこからは話さないのであった。清洲のその見事な堀と石垣、それに壁や櫓を見ながらだ。信行に対して話すのであった。
「ではまずはですね」
「攻めるか」
「はい、それでは」
「皆に伝えよ」
信行はその空虚な声で述べた。
「よいな、今よりだ」
「城攻めですな」
「城には兵はほぼおらぬ」
このことは彼も知っていた。僅かな兵しか残っていないことをだ。
「そして兄上も戦える家臣も残っておらぬ」
「まさに攻めればそれだけで」
「攻め落とせる」
信行はこのことを確信していた。
「さすればだ。今からよ」
「この六千の兵で攻めそのうえで」
「陥とすとしようぞ」
こうして法螺貝が鳴り城攻めがはじまった。しかし。
足軽達の動きはだ。ここでも鈍かった。
のろのろと動きだ。中々前に進もうとしない。
「どうしてもか」
「嫌だのう」
「全くじゃ」
「城を攻めてもじゃ」
「何になるのじゃ」
こう言ってであった。進まない。
「信行様は何を考えておるのか」
「それもわからん」
「わからん戦じゃ」
「何故謀叛なのじゃ」
「信行様が」
信行は彼等の間でも信頼されていたのだ。信長のすぐ下の弟として、そして頼りになる補佐役としてである。信頼されていたのである。
その彼が謀叛というのがだ。どうしても信じられないのだった。彼等もだ。
しかし戦ははじまっていた。それは清洲の中からもわかることだった。
城に残っている僅かな者達が武器を手にし具足を身に着けていた。男達だけでなく女達もだ。今はその手に薙刀を手にしていた。
「敵の手にかかる位なら」
「私達もです」
彼女達は意を決した顔でこう言うのであった。
「薙刀を振るえばそれだけでかなりのもの」
「ですから」
「そうだな。我等一丸となりだ」
「殿が戻ってこられるまでだ」
男達もここで言うのであった。
「持ちこたえそうしてだ」
「守りきるぞ」
「よいな」
「では城壁を固め」
まずはそれであった。
「門は全て閉ざしています」
「後は何があろうとも」
「守りきりましょう」
彼等は何としても城を守るつもりだった。信長が戻って来るまでだ。そしてここでだ。帰蝶が彼等の前に青い具足と袴、それに白い陣羽織に鉢巻姿で来たのだった。
長い髪が今は垂らされている。それが艶やかな光沢を放っている。その髪をなびかせながらだ。彼女は右手に薙刀を持ちこう言うのであった。
「正門を開けるの
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