第二十話 信行謀叛その十
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「ここは」
「それはその時になればですが」
「しかしなのですね」
「やはりあの男を」
「討ちますか」
「この戦の元凶は間違いなくあの男です」
このことは確信だった。最早だ。
「ですからここは何としてもです」
「はい、それでは」
「あの男だけを狙い」
「そうしてですね」
こんな話をしてだった。帰蝶もまた備えるのであった。戦の刻は刻一刻と近付いてきていた。そうしてその上でなのだった。
清洲城は戦の用意に入っていた。そしてそこに信行の軍勢が迫る。信長にこの二つのことはまさに手に取る様に伝わっていた。
そしてだ。美濃の境に来た時にだ。彼は言うのだった。
「よし、それではだ」
「それではですか」
「いよいよですね」
「軍を反転させる」
実際にそうするとだ。彼は家臣達に述べた。
「よいな、いよいよだ」
「では殿」
「これよりですね」
「今すぐに」
前田に佐々、それに金森が言ってきた。
「軍を清洲に」
「そうして勘十郎様と」
「いよいよ」
「決しますか」
「雌雄を決するのではないがな」
それは笑って否定する信長だった。しかしであった。
信長はすぐにだ。こうも言うのであった。
「しかしだ。決めることは決めるぞ」
「はっ、それではです」
「今こそ」
「千程度の兵を小牧山の城に置く」
信長はそれだけの兵を置くとも述べた。
「それで斎藤を迂闊に進ませぬ」
「そうしてそのうえで」
「残る兵で清洲まで戻り」
「いよいよ」
「この騒動を終わらせる」
ここでは戦と呼ばない信長だった。
「それでじゃ」
「はい、それで」
「どうされますか」
「茶をくれ」
今はそれだというのであった。
「少し喉が渇いた。何か飲むとしよう」
「わかりました。それでは」
平手が応えた。そうしてであった。
「今より淹れさせてもらいます」
「いやいや、そこまでせずともよい」
信長は平手が自ら淹れようとするのは少し慌てて止めた。そうして言うのだった。
「これから大急ぎで清洲まで引き返すのだぞ」
「それ程悠長なことは言っておられぬというのですな」
「そうじゃ。そこまではよい」
「ではどうされますか」
「水でよい」
それを所望だというのである。
「水じゃ。それを貰おう」
「それで宜しいのですか」
「急ぎじゃ。時をかけてはおれぬ」
信長のその顔が確かなものにある。時の大事さをだ。わかっているからこそであった。
「ではだ。よいな」
「はい、それでは」
平手も彼のその言葉に頷いてだ。周りに対して言うのであった。
「皆もどうじゃ」
「はい、それでは」
「有り難く頂きます」
「平手殿が仰るのなら」
「今から大急ぎで戻るからのう」
平手もだった。ここでこのこ
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