第二十話 信行謀叛その四
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「戦の経験は乏しい」
「明らかに殿に比べて落ちる」
「清洲を攻め落とせれば話は変わるが」
「それもどうか」
彼等は今その清洲に向かっている。その中で清洲について話すのだった。軍勢はやはり織田の青だ。しかし何かが違っていた。
兵達もだ。いぶしみながら小声で囁き合うのだった。
「信長様との戦か?」
「それはまことか」
「今から信長様と戦うのか」
「尾張の主と」
こう言ってだった。誰もが驚きを隠せなかった。
「信じられんが」
「信行様が謀叛だというのか」
「それはまことか」
「嘘ではないのか」
「こうして兵を実際に進めているぞ」
足軽の一人がこう仲間達に言う。
「わし等自身がな」
「では本当なのか」
「本当に信長様との戦か」
「信行様は何を考えておられるのだ」
「どういうことだ」
それがどうしてもなのだった。彼等にはわからなかった。それで今の事情がどうしてもわからずだ。こうそれぞれ言うのだった。
彼等は明らかにだった。浮き足立っていた。彼等の主はやはり信長であった。その彼と戦うということはどうしてもわからなかった。
それでだ。彼等の中にはこう囁く者もいた。
「我等の主は信長様だな」
「その信長様と戦えるか」
「討つなぞとんでもないぞ」
「そうだ、あの方はとても討てん」
こう言い合う。信長との戦いはどうしてもできないという者ばかりであった。
このことは信行の耳にも入った。彼は夜の陣においてだ。かがり火の中でこのことについて津々木と話をするのであった。
「兵達が浮き足だっておるな」
「左様ですか」
津々木の言葉は落ち着いたものだった。
「それではです」
「どうするのだ、一体」
「本来なら不貞の輩を始末しますが」
この言葉は実に素っ気無いものだった。まるで石を捨てるかの様な。
「しかし今ここで兵を失う訳にはいきません」
「そうじゃ、清洲を攻めねばならん」
「その通りです。ですからここは」
「うむ、どうするのだ」
「金を使いましょう」
それをだというのだ。
「それを兵達にばら撒きです」
「そのうえで心を掴むか」
「はい、それでどうでしょうか」
「そうだな。尾張が手に入れば金なぞどうともなる」
それを考えての言葉だった。
「ではそれではだ」
「はい、それで宜しいですね」
「うむ、頼んだぞ」
こうしてだった。彼等は兵達に金をばら撒くのだった。確かにそれで彼等は今は落ち着いた。しかしそれでもなのであった。
彼等はだ。ここでまた言うのであった。
「金は貰ったがな」
「それでもな。やはり信長様と戦うのは」
「今から清洲を攻めるそうだな」
「うむ、そうだ」
「そうらしいぞ」
今度はこのことを話すのだった。
「清洲か。とても攻められ
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