第二十話 信行謀叛その三
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「では殿。清洲を攻め取られ」
「この国全てをだ」
「殿のものにされますな」
「兄上には任せておけぬ」
その目での言葉だった。
「この尾張はだ」
「左様です。尾張を治められるに相応しい方は」
「私だ」
明らかにいつもの、これまでの信行の言葉ではなかった。
「兄上ではない」
「既に兵の用意は整っております」
「早いな」
「待っていましたので」
だからだというのだった。
「それで」
「流石だな。それではだ」
「挙兵を」
「うむ、それではな」
こうしてだった。彼等も挙兵する。それには柴田達も従う。しかしだった。
彼等は信行の言葉通り後詰だった。出陣するその後ろにいてだ。柴田が首を傾げさせながら林兄弟に対してこう言うのだった。
「遂にだな」
「そうだな」
「挙兵されたな」
「まさかとは思った」
柴田はだ。馬上においてその厳しい顔をいぶかしめさせている。
「信行様が謀叛とはな」
「わしもだ」
「わしも同じだ」
林兄弟も柴田と同じ顔になっていた。
「最後の最後まで信じられなかったが」
「実際にそうされた」
「信行様の行動には思えぬ」
「やはりあれは」
「あの男だな」
柴田の顔が変わった。忌々しげなものにだ。
「津々木。やはりあの男よ」
「おそらく信行様は操られているな」
「そうとしか思えぬ」
林兄弟はそう見ていた。
「あの者をどうにかしなければ」
「話は終わらんな」
「そうだな。しかし今は無理か」
できればなのだった。柴田は今その男を始末したかった。だがそれが無理なのはだ。彼もよくわかっていることなのだった。
そえでだった。彼は言うのであった。
「信行様が我等を近付けられぬ」
「近付けられるのはあの男だけ」
「それではな」
「やはりこれもおかしいのだ」
柴田はここでまたこう言った。
「信行様は人の話を聞かれる方だ」
「だが今はだ」
「あの者だけだ」
林兄弟はここでも柴田の言葉に応える。
「我等を決して近付けず」
「こうして挙兵された」
「しかも我等三人は後詰だ」
柴田はこのことも指摘した。
「織田家においてわしを攻める時に後詰に置くなぞな」
「うむ、有り得ぬ」
「絶対にだ」
林兄弟は今度は自分達のことも話した。
「我等も本陣には置かぬ」
「それもない」
つまりだ。先鋒と目付達を置かないのだ。織田家きってのだ。
「あくまであの男だけ」
「やはり違う」
「何かがおかしいぞ」
「この戦、どう思うか」
柴田はここで二人にこのことを尋ねた。
「勝てると思うか」
「無理であろうな」
「おそらくな」
こう答える二人だった。
「あの津々木については知らぬ」
「しかし信行様はだ」
大将である彼はどうか
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