第十八話 道三の最期その十五
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「今にも来るだろうな」
「今川義元じゃな」
「さて、その戦がどうなるか」
慶次の顔が笑顔になっていた。そのうえでの言葉になっていた。
「面白い戦になるぞ」
「首が欲しいか」
「いやいや、戦が空きなのだ」
その笑顔のまま可児に話す。
「わしはな」
「ふむ、それではだ」
「御主も同じじゃな」
「うむ、戦が好きじゃ」
可児も同じ笑みになって話す。
「そして倒した者にはじゃ」
「聞いておるぞ。笹じゃな」
「左様、笹を刺す」
こう慶次に話す。
「それがわしの流儀よ」
「風流よな。ではわしもそうするか」
「いや、それは止めておけ」
「駄目か」
「それはわしの専売特許よ」
これが可児の返答だった。
「だからよ。よいか」
「ううむ。そうだな」
慶次も結局それで頷くのだった。
「わしはわしのやり方でいくか」
「そうしろ。そなたの傾き方でな」
「わしのそれは凄いぞ」
慶次は傾くことになるとさらに楽しく話すのだった。
「わしの目指すものはだ」
「何だというのだ」
「天下一の傾奇者になることよ」
それだというのだ。
「それになることよ」
「随分と変わった夢だな」
「ははは、おかしいか」
「普通はそんな夢を持たぬぞ」
「だからいいのよ」
それだからこそとだ。慶次はここでも笑って言う。
「誰も持たぬような夢だからこそだ」
「御主が持つのか」
「そうする。傾くことにかけては誰にも負けたくはない」
「武勇はどうじゃ」
可児はそのことも尋ねた。二人は今も槍を競い合っている。それはどちらも優劣つけ難い、そうした一進一退の競い合いであった。
その中でだった。可児はそれを問うのだった。
「それは」
「ふむ、それか」
「そうじゃ。御主は武辺者だな」
「いやいや。武辺者ではないぞ」
「では何じゃ」
「ふべん者よ」
それだというのである。
「わしはふべん者じゃ。戦以外では生きられぬからな」
「それを言うならわしもじゃぞ」
「何じゃ、御主もか」
「知っておるのは戦のことだけ」
槍を振るいながら笑って話す可児だった。
「御主と同じくな」
「それでか」
「そうよ。まあ風流は好きじゃが」
ここも慶次と同じだった。だからこそだった。
「それでもじゃ。わしもじゃ」
「ふべん者か」
「御主と同じじゃな」
「そうか。だからわしはふべん者として傾く」
慶次は己のその決意を今語った。
「こう言うと平手殿や権六殿に叱られるがのう」
「それで怒られるのか」
「政もせよとな」
それでだというのだ。
「それで叱られるのよ」
「わしも政は知らぬがな」
知らない以前に興味がない。やはり槍一筋の可児だった。
「織田家ではそれが五月蝿いのか」
「ほぼ誰も
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