第十八話 道三の最期その十三
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「退くように言ったがな」
「それでもですか」
「やはりご本心は」
「戦われたかったのですね」
「そうだ、そうするしかなかった」
こう無念の声で言うのだった。
「止むを得ない」
「そして道三殿ですが」
ここで、だった。滝川が来たのだった。
「自決されたようです」
「で、あるか」
「はい、お一人で燃え盛る櫓の中に入られ」
「そしてか」
「自ら腹を切られたとのことです」
「首は見つからなかったのだな」
「はい」
それもだというのだった。
「全ては炎に包まれです」
「見事だ」
そこまで聞いた信長の言葉だ。
「義父殿は最後まで義父殿であられたな」
「それではです。あの方から頂いたあのことですが」
「それはですか」
「その時が来れば」
「そうよ。まずはやることがある」
そのことは決して忘れていなかった。彼はここでそれを具体的に言うのだった。
「まずはだ」
「尾張ですか」
「それですね」
「最初は」
「国の中をまずは整える」
やはりそれであった。
「わかったな」
「ですな」
「まずは己の国を万全にし」
「全てはそれからですね」
「そしてだ」
信長の言葉は続く。次は、であった。
「来る者は退ける。よいな」
「来ますか、やはり」
「あの者達が」
「この尾張に」
「間違いなく来る。それの備えもするぞ」
「はっ、わかりました」
「それでは」
家臣達も頷いてであった。そのうえでだ。
信長は清洲に戻りだ。すぐに美濃に向けて兵を整えそのうえでだ。次に対しての備えを忘れないのだった。それは既に行っていた。
その中でだった。可児が慶次に対して問うていた。今二人は清洲の城の中で互いに槍をぶつけ合っている。稽古をしているのだ。
石垣を背にしてだ。可児は慶次に問うたのだ。
「一つ聞きたいことがあるが」
「うむ、何だ?」
「また戦が起こるな」
可児が言うのはこのことだった。
「そうだな」
「そうだろうな」
慶次もそれを否定しなかった。化け物の如き槍を振るいながら言う。
「すぐに起こるぞ」
「やはりそうか」
「しかし誰も死なんよ」
ここでこうも言う慶次だった。
「次の戦はな」
「既に決まっておるのか」
「うむ、そうだ」
「それを知っておるのか」
「少なくとも殿はだ」
その信長についての話だった。
「信行様を殺しはされんよ」
「何があろうともか」
「信行様には何も落ち度はない」
「ないのか」
「そうだ、どう見てもない」
こう言うのである。
「おそらくあの男に操られておるな」
「津々木とかいうらしいな」
「かなり胡散臭い男だ」
慶次は槍を振るいながら述べる。その手の槍は縦横に動く。
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