第十八話 道三の最期その十
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櫓は完全に炎に包まれ全てを焼き尽くした。巨大な炎の柱となったのだった。
「大殿、お見事でした」
「では我等もです」
「お供します」
残った者達もそれぞれ敵の中に切り込み腹を切りだった。一人残らず果ててしまった。美濃での父子の戦いは紅蓮の中に幕を閉じたのであった。
道三の首は見つからなかった。亡骸もだ。櫓は完全に燃え落ち後には消し炭だけが残った。義龍は戦いの後でその燃え落ちた後を見ながら言うのだった。
「あれが父上の墓だったか」
「はい、大殿はあの櫓の中で腹を切られました」
「多くの者がその目で見ております」
「そうか」
それを聞いてだ。義龍は深く考える顔になった。そのうえでこう言うのだった。
「では。弔うとしよう」
「そうされますか」
「ここは」
「首を見ればそうはしなかった」
その場合はというのである。
「だが、だ。何一つ残さずではだ」
「お気持ちが変わられましたか」
「それで」
「そうだ、それではもうよい」
何処か長年のわだかまりが消えたような。そうした顔であった。
「弔うのだ。この戦で死んだ全ての者もだ」
「そうされよと」
「敵味方関係なく」
「どの者も見事に戦った」
このことは義龍もよくわかった。実際にその場にいたからだ。
「さすればだ。どの者もだ」
「弔うべきだと」
「そう仰いますか」
「そうせよ。よいな」
「はっ、それでは」
「後の始末が済み次第すぐに」
「そうします」
家臣達も応える。こうして道三を弔うことも決まったのだった。
この戦の顛末は斥候や密偵達によって知られていた。そうしてすぐに進撃する信長の下に伝えられたのであった。
信長はそれを聞いてだ。まずは瞑目した。それからだった。
「で、あるか」
まずはこう言ったのであった。
そしてだった。ここで可児が出て来て彼に言うのであった。
「実は」
「義父殿か」
「はい、こうなった時にお渡しするつもりだったものです」
こう言ってだった。信長にあるものを差し出してきた。それは。
「文じゃな」
「大殿からのものです」
それだというのである。
「読まれますか」
「無論な」
当然だと。こう返す信長だった。
「そうさせてもらう」
「わかりました。それでは」
こうして可児から文を受け取り読みだす。そこに書いてあったことは。
「ふむ」
「して殿」
「何と書いてありますか」
「蝮殿の文は」
「美濃をわしに譲るとある」
読んだことをそのままだ。家臣達に答えたのである。
「そうな。書いてある」
「美濃をですか」
「殿に譲られるとは」
「何と」
「帰蝶の婿にあるわしにじゃ」
血縁としてはそこからであった。
「是非譲るとある。それに」
「それに」
「それ
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