第十八話 道三の最期その六
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「ここで大事なことはです」
「信行様はそもそも兵を持たれておらぬからな」
「兵は殿が持っておられる」
織田家では今は兵は信長がそのほぼ全てを持ち家臣達に預ける形となっている。柴田や林の兵はそうした意味で信長の兵になっているのである。
「だから動かれるには」
「兵を御自身」
「このままではです」
また言う木下秀長だった。
「我等織田家は家中に火種を抱えたままになります」
「よりによってそれが信行様だとな」
「不都合極まりないからのう」
「殿の弟君ぞ」
「一門衆の中でも重鎮ぞ」
「しかもじゃ」
滝川もだ。信行について話す。
「信行様は政においては織田家において殿の片腕となられる方ぞ」
「その方が怪しいのではな」
「話にもならんからな」
「その通りです。普段の信行様ならば」
「何の問題もないのだが」
「それが今は」
彼等は腕を組んで悩んでいた。織田家も今火種を抱えていたのだ。
そのうえで美濃に向かう。そこにだった。
一人の大柄な武者が来た。右肩に笹を刺した彼が来てだった。こう前田達に対して話すのだった。
「織田の軍だな」
「うむ、そうだが」
「その通りだ」
前田と佐々が彼の言葉に応える。しかしだった。
二人もその武者の右肩のその笹を見てだった。こう言うのだった。
「そういう御主はじゃ」
「その笹から見てじゃ」
「あの可児才蔵か」
「美濃で名うての武者の。そうじゃな」
「その通りよ」
その武者、可児も胸を張って答える。
「わしがその笹の才蔵よ」
「その御主が来るか」
「一人で来るところを見ると戦をしに来たのではないな」
「うむ、御主等にとって残念かも知れんがその通りよ」
可児は二人に対してまた述べた。
「わしは戦をしに来たのではない」
「では何故来たのじゃ」
「何用でだ」
「織田信長殿はおられるか」
真剣な顔で二人に問うたのだった。
「あの方は」
「殿に御会いしたいのか」
「では使者だな」
「そういうことだ。ではよいか」
「うむ、それではだ」
滝川が出て来て彼に応える。
「案内しよう。ついて参れ」
「うむ、それではな」
「しかし。あの笹の才蔵が来るか」
「美濃でも名の知られた武辺者が」
尾張でその武勇を知られた二人もだった。可児については一目置きそのうえで言うのだった。
「使者にしてもこれは」
「何かあるのう」
そのことを察して当然のことだった。そうしてそのうえで可児と彼を案内する滝川の後ろ姿を見送るのだった。こうしてだった。
可児は信長の本陣に案内された。彼は信長の前に跪きその姿勢で一礼してからだ。あらためて信長に対して言うのであった。
「おはつにお目にかかります」
「名前は聞いているぞ」
信長は早速こう彼
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