第十八話 道三の最期その二
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「数はこちらの方が圧倒している!」
義龍が馬上から叫ぶ。彼はその川を渡る軍のところにいる。
「だからよ。ここはだ」
「はい、まずは向こう岸の兵達を弓や鉄砲の嵐で散らし」
「そしてそこを一気に渡ります」
「そうするのですね」
「そうよ、そうするのだ」
これが義龍の作戦だった。
「わかったな」
「はい!」
「では!」
こうしてだった義龍の兵達は川を渡りにかかる。兵力において大きく劣る道三にはもうそれを防ぐ手立てはなかった。
その有様を見てだ。道三は思わず呟いた。
「やりおるわ」
「義龍様がですな」
「そうですな」
「そうだ、義龍だ」
その彼がだ。やるというのだった。そしてその彼を見てまた言うのだった。
「あれの大柄は母親譲りだがな」
「そうですな。あの方も大きな方でした」
「さすれば義龍様もまた」
「そして。本当にわからなくなってきたわ」
これが道三の言いたいことだった。
「あれは本当にわしの子やも知れぬな」
「大殿のご子息なのですか」
「土岐様ではなく」
「違うのではないかと本気で思った時もあった」
彼にしてもそうだったのだ。父親となっている彼でもだ。
「だが。あの戦い方はだ」
「理に適っていますな」
「しかも敵味方のことをよくわかっておられます」
「地のことも」
「見事だ」
道三もこう言った。そしてなのだった。彼はこう言うのだった。
「あれはやはりわしの」
「ですか」
「そうだと」
「少なくとも育てたのはわしだ」
「そうですな、それは」
「確かに」
家臣達も道三の今の言葉に頷く。
「ではやはり」
「義龍様もですね」
「大殿の」
「今わかった」
また言う道三だった。
「そのことがな」
「左様ですか、今ですか」
「それがおわかりになられたのは」
「ずっとわかっていなかった」
そうだったというのであった。
「子とは何かがな」
「しかしです」
「今の大殿のお顔ですが」
「申し上げて宜しいでしょうか」
家臣達は道三の顔を見てだ。そのうえで彼に言うのだった。
「それは」
「いいぞ」
これが道三の返事だった。
「何でもよい。言ってみよ」
「はい、何か嬉しそうなのですが」
「明るいです」
「それは何故ですか」
「一体」
「わかったからだ」
それでだと。道三はあその顔で話すのだった。
「そのことがだ」
「だからですか」
「それでなのですね」
「その明るいお顔は」
「そういうことだ。それでだが」
戦局を見る。見ればだった。
義龍の大軍はその数を使い彼等から見て川の向こう側にいる道三の軍を弓と鉄砲で倒していく。そのうえでだった。
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