第十七話 美濃の異変その八
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「父上はどうか」
「はい、今のところはいつも通り稲葉山から出られてです」
「御自身の居城におられます」
「変わりません」
「ではだ。その後でだ」
「はい、兵を挙げましょう」
「この稲葉山で」
家臣達も述べる。そしてなのだった。
彼等は今は息をこらしていた。そのうえで策を練っていた。しかしそれについてだ。道三は動く気配一つ見せてはいなかった。
その彼はだ。竹中達にこう言うのであった。
「義龍が動こうとしておるな」
「はい」
「どうやら」
「その様ですな」
三人衆がこう道三に応えた。不破もいる。
「御子息方を稲葉山に招かれようとしています」
「どうされますか、ここは」
「行かせますか」
「馬鹿を申せ」
それはないとだ。動産は断言した。
そしてだ。こう竹中達に告げるのだった。
「息子達は美濃から去らせよ」
「そうして御命をですね」
「助けられますか」
「そうする。むざむざ殺されるとわかって行かせる道理はない」
道三も人である。それならばだった。我が子をむざむざ死にに行かせる筈がなかった。ましてやであった。
「それにだ」
「それに?」
「それにといいますと」
「あの者達を去らせると義龍もすぐに察する」
そうなるというのだった。
「そしてすぐに兵を起こすだろう」
「結果は同じですか」
「そうなりますか」
「必ずなる。さすればよ」
そうなればというのであった。
「むざむざ死なせることもあるまい」
「ではその向かわせられる先は」
「どちらでしょうか」
「無論尾張よ」
信長のいるそこだというのだった。
「婿殿に行かせるぞ」
「はい、わかりました」
「それでは」
「そしてじゃ」
息子達のことを話してだった。道三はさらに話すのであった。
「そなた達じゃが」
「はっ、それではです」
「何時でも兵を出せるようにしておきます」
「ことがあればその時は」
「すぐにでも」
実際に兵を持っている三人衆と不破が名乗りをあげてきた。
「では殿」
「稲葉山をですな」
「兵を挙げて囲みましょう」
「そして陥しましょう」
「いや、よい」
だが、だった。道三はここでこう言ったのであった。
そうしてだ。今度はこう言うのであった。
「兵を用意する必要はない」
「?殿」
「といいますと一体」
「それはどういうことですか」
「意味がわかりませんが」
「そうです」
四人だけでなく竹中も言ってきた。怪訝な顔になっている。
「義龍殿は相当な兵を稲葉山と御自身の周りの方々に備えさせています。それで兵を用意させないというのはです」
「危ういというのだな」
「はい、そうです」
まさにその通りだというのであった。
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