第十七話 美濃の異変その二
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「尾張を手に入れ美濃も手中に収めるとじゃ」
「あとは美濃だけになり」
「さすればですか」
「おのずと殿の手に入られると」
「そうなる。しかし機を逃すのも愚よ」
このこともわかっているのだった。信長は機を見るにも敏だった。
そのうえで話すのであった。今は備えるだけであった。
その時にだった。信長はこんなことも言うのであった。
「して勘十郎じゃが」
「信行様ですか」
「そういえば今も御自身の城に篭っておられますか」
「最近常にでござるな」
「あの津々木とじゃな」
信長からこの名前を出した。
「何かを企んでおるな」
「兵を出しますか」
川尻が提案してきた。
「ここは」
「勘十郎とあの男を捕らえよというのじゃな」
「はい、悪い芽は今のうちに摘み取ってはどうでしょうか」
「そうじゃな。それは悪くないのう」
「では今すぐに。それがしが向かいます」
「いや、待て」
ところがなのだった。信長は川尻のその提案を退けたのだった。
そしてそのうえでだ。こう言ってきたのであった。
「それはまだよ。あ奴はまだ動かぬしな」
「動きませぬか」
「兵がない」
だからだというのである。兵がいなければ何もできはしない。兵はそのまま力である。力がなければどうしようもないことであるからだ。
それでなのだった。彼は今はいいというのであった。
「あ奴は一度動いてもらう」
「ではそれがし達が勘十郎様につき」
「そうしてでございますな」
「そのうえで」
柴田と林兄弟が申し出てきたのだった。信長から信行につきそのうえで目付をするように言われている彼等がなのだった。
「兵を手に入れられてから」
「動かれるかと」
「それを考えてよ」
信長も彼等に話す。
「そなた等にはかなりの兵を預けておるのだ」
「六千五百」
「そこまででござるな」
「これだけあれば動くであろう」
信長の目が光った。
「勘十郎も。後ろにおる者もな」
「後ろですか」
「あの者がいるのは」
「そこ以外に何処にいるというのだ」
信長の目がここで光を変えた。憎しみがそこにあった。
「違うか。勘十郎を操っているのであろう」
「はい、どうやら」
「あれは」
林兄弟が答える。
「そう思って間違いありませぬ」
「そうとしか言えませぬ」
「常に傍にいるそうじゃな」
信長は林兄弟の話を受けてからまた述べた。
「それではじゃ。後ろにおると言っても過言ではあるまい」
「それではです」
前野であった。
「津々木を除いてしまえばいいのでは」
「確かに。それならば」
「容易でござるな」
佐々と山内が前野のその言葉に頷いた。
「勘十郎様もそれで御自身を取り戻されます」
「それで万事解決でござるな」
「では殿」
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