第十七話 美濃の異変その一
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第十七話 美濃の異変
「殿、美濃ですが」
「どうやら異変が起ころうとしております」
信長のところにだ。こう報告が届くようになってきていた。
「御子息の義龍殿がです」
「怪しい動きを見せておられます」
「これはどうやら」
「謀反じゃな」
信長もそれを聞いて述べた。
「それじゃな」
「そう思われますか」
佐久間盛重がここで主に問うた。
「殿は」
「そう考えるのが普通であろう」
「しかしです」
佐久間盛重はわかっていた。だがあえてだった。ここで再び主に対して問うたのである。
「それは」
「親子だからか」
「はい、親子の間で謀反なぞとは。ましてや義龍殿は既に家督を譲られておりますし」
「親子とても油断はできないのではありませぬか?」
今度は佐久間であった。叔父に対する形で言うのであった。
「今は戦国の世でござるぞ」
「それはそうだがな」
「甲斐でもそうだったではありませぬか」
信長は実はだ。信玄の話をここで出そうとした。しかしそれはだ。主の心を思い計ってそれで佐久間があえて言ってみせたのであった。これは彼の主への気遣いであった。
「信玄殿は御父上を追い出してござるな」
「それと同じか」
「そう思いますが」
「しかもあれですな」
金森であった。
「義龍殿は噂によると」46
「土岐殿の子ということですな」
「あれはまことでしょうか」
「どうなのでござろうか」
「その話はわしも知っておる」
信長もだとだ。自分で言うのだった。
「それは本人もわかっておろう。そうしてこともあればじゃ」
「謀反になるのも道理」
「そういうことでござるか」
「そうよ。義父殿は義龍殿より弟殿達を可愛がっているともいうしのう」
このことも話す信長だった。
「そちらに家督がいくとも考えるな」
「ではそうしたこともありですが」
「美濃では何があってもおかしくはない」
「そうなりますか」
「さて、それではじゃ」
信長はあらためて言ってきた。
「何時でも兵を出せるようにしておけ」
「兵をですか」
「では何かあれば美濃に」
「すぐにでござるな」
「そうじゃ。義父殿を助けるぞ」
毅然としてだ。話すのであった。
「その時はじゃ。よいな」
「はい、それではその時は」
「すぐに兵を出してですね」
「道三殿を」
「さすれば美濃が我等の手に入りますな」
このことを話したのは生駒であった。彼は軍師として話すのだった。
「道三殿を助ければそれで」
「そうじゃな。だがそれはじゃ」
「それは?」
「それはといいますと」
「柿が落ちるのと同じよ」
いぶかしむ家臣達にだ。こう話してみせるのだった。
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