第十六話 正装その七
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「言っておられた」
「というと槍と鉄砲を?」
「それかのう」
「織田の武器といえばな」
「弱い兵達じゃしのう」
「武器だけだしのう」
「あとは青い鎧とかだけじゃ」
家臣達もここでそれぞれ話すのだった。
「その二つを蝮に見せるか」
「それをはったりとするのか」
「はったりもあるが実際に誇示もするのであろうな」
今言ったのは金森だった。
「蝮に殿のことを見せる為にな」
「それでか」
「それであそこまで連れて来て持って来た」
「そういうことか」
「殿は何も考えなしでは動かぬ方だしな」
「そうであるか」
彼等もここで納得しだした。そうしてであった。
それぞれ会見の部屋に入る。まだ斉藤の者達は来ていない。青い正装の者達だけが整然と座る。そのうえでまずは信長を待つのだった。
その信長が来た。彼を見てだった。
「何とっ」
「そうされますか」
「これはまた」
「やられますか」
「ははは、驚いたか」
彼等の言葉にまずは笑う信長だった。
「御主達も」
「いえ、その服装とは」
「流石に思いませぬ」
「まさか」
「そうされますか」
「やるなら思い切ってよ」
また笑って言う信長だった。
「だからよ。それではだ」
「はい、それではですな」
「いよいよでござる」
「美濃の蝮」
「今こそ」
彼等はまさに戦の場にいた。鎧も剣もないがそれでもだった。その心に研ぎ澄ましたものを持ってだ。そのうえで相手を待つのだった。
その相手はだ。今部屋に向かっていた。そうしてであった。
「では殿」
「我等もですな」
「この格好で参ればいいのですな」
「これで」
「そうじゃ。わしが略装じゃぞ」
道三は己に続く家臣達に述べた。彼等も略装である。主がそれならば家臣達もそうであるのは当然のことであった。それでなのだ。
「してその方等が正装の筈があるまい」
「そうですな。それではです」
「今より部屋に入り」
「そのうえで」
「まあ面白いことになるだろう」
道三はここでも面白そうに笑うのだった。木の廊下の上を進み部屋に向かいながらだ。
「今度もな」
「?といいますと」
「一体何が」
「何か仕掛けでも」
「わしは何もしておらん」
彼はだというのだ。
「何もな」
「では刺客やそういったものもですか」
「ここにはですか」
「伏せていませんか」
「最初から連れても来ておらん」
そうだというのであった。
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