第一話 うつけ生まれるその二
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「その池田氏を尾張に招け」
「我等の下にですか」
「そうだ、家臣に迎えるのだ」
そうせよというのである。
「今は少しでも人が必要だ。だからじゃ」
「はい、それでは」
「まずは御主がおる」
信秀はここでもまず政秀を見て述べた。
「しかしまだ人は必要じゃ」
「吉法師様の為にも」
「今からこれだけ暴れておるのじゃ」
このことも話すのだった。
「若しかすると大物になるかも知れん」
「この尾張を統一ですか」
「いや、上じゃ」
信秀は笑って言った。
「さらに上じゃ」
「上といいますと」
「尾張一国よりさらに上にいくかも知れん」
吉法師をこう評したのである。
「若しかしたらな」
「そしてその為にですね」
「うむ、人が必要じゃ」
これが信秀の考えであった。
「わかったな。さすればじゃ」
「はい、それでは」
こうしてだった。その池田氏は一族単位で信秀の家臣となった。またその妻は心の優しい者で信長を確かに育てた。そうしてであった。
信秀は織田氏の中で頭角を表していき勢力を次々と拡げていった。やがて尾張のかなりの部分を領有し領土も人材も尾張では傑出したものになっていた。
そしてだ。それと共にだ。
吉法師には弟や妹達が次々とできた。そして彼も成長していった。
だがその日頃の行いはだ。守役の政秀をして困惑させるものであった。
「また馬ですか」
「うむ、悪いか」
「馬も宜しいですが」
その吉法師に対して困惑した顔で言うのであった。
「乗り方があまりにも」
「悪いというのか?」
「あまりにも無作法に速く駆け過ぎです」
これが彼の言葉だ。
「それでは。将来殿として立たれるには」
「爺、馬は何の為にある」
しかしここで彼は言うのだった。その甲高い声でだ。
「何の為にある」
「当然戦場で乗る為です」
「戦場で敵から逃げる時に最も大事なものだな」
「はい」
「ならば速く駆けなくてどうする」
彼は厳しい顔で政秀に問う。
「そうであろう。馬をのろのろと駆けさせても何にもならん」
「だからですか」
「そうじゃ。馬は速く駆けてこそじゃ」
こう言うのであった。
「それでこそじゃ」
「それはそうですが」
「水練も同じじゃ」
吉法師は水練についても言った。彼は馬だけでなくそれも毎日していたのだ。
「逃げる時は常に一人ぞ」
「一人だからですか」
「だからじゃ。速く長く進めなくてどうするのじゃ」
さらに言葉を続けてきた。
「だからじゃ。わしはこのやり方を変えぬぞ」
「怪我をされたら大変です」
「怪我?馬鹿を言え」
この注意には笑って返すのであった。
「怪我をして死ねばそれまでじゃ」
「またその様なことを」
「人は必ず死ぬものぞ」
子供で
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