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木の葉芽吹きて大樹為す
若葉時代・エピローグ

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 ――穏やかな、日々。
 その中に埋没してしまった、ある一日の話。

「こんな所にいたのか、柱間。貴様は仮にもこの里の長だろう。こんなところで油を売って何をしている」
「あははは。もう見つかっちゃったのか、残念だな。――皆、今日はここまでだよ」

 青々とした若葉を茂らせた巨木の作る木陰にて、子供達に囲まれて何事かを話していたその人は聞こえて来た声に、残念そうに笑って手を叩く。
 名残惜しそうに子供達が木陰から飛び出していく中、巨木の根元に腰を下ろしていたその人は大きく伸びをした。

「マダラもさぁ、顔は悪くないんだから、もう少し優しい顔をすればいいのに」
「余計なお世話だ」

 男の苛立った声にも、その人は笑っただけだ。
 座り込んでいたその人は腰を上げると、優しい目付きで眼下の街並を見つめた。

「木の葉も、随分と発展したよな。この間まで更地だったのが信じられないくらいだ」

 それもこれも、皆のお蔭だよな。
 小さく呟かれた言葉に、男が不機嫌そうに眉を顰める。

「それ程の力があれば、反対する者など一気に捩じ伏せる物が出来るものを。何故貴様は悠長な手段ばかりをとろうとする」
「力で押え付けるのは簡単だが、それでは不満も溜まり易いだろ。溜まりに溜まった不満を始めとする負の感情は一気に暴発する恐れがある。――そんな事はしたくないからな」
「やはりお前は甘い」
「そう言うお前はやっぱり強情だな。もう少し、人を信じればいいのに」

 麗らかな晴天の日。
 交わされた言葉はあくまで軽やかで、気心の知れた者同士の気安ささえ感じられた。

 ――――かつて確かにあった筈の日々。
 それは今ではどこまでも遠く……信じられない程脆い物であったと彼らはいずれ思い知る。

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