第十五話 異装その八
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「それは」
「殿までそう仰るのですか」
「爺は尾張で一番怖い人間ぞ」
信長の言葉は変わらない。
「閻魔に相応しいわ」
「全く。悪ふざけにも程があります」
「ははは、そう言うか」
「左様です。しかしこの格好で出てですか」
「そうじゃ。ただしじゃ」
ここでまた言う信長だった。
「一つ肝心なことがあるぞ」
「足軽達ですな」
「あの者達については」
「あの長柄槍を持たせる」
まずはそれだというのだ。
「そして鉄砲もじゃ」
「それもですね」
「持たせますか」
「無論鎧に陣笠、旗は青じゃ」
これを言うのも忘れない。
「それは忘れるでないぞ」
「はっ、わかっております」
「それにつきましては」
家臣達はそれぞれ彼の言葉に応えた。そうしてだった。
彼等も寺に向かう。それぞれ奇抜な格好をしたうえでだ。そうしてその姿を見ようとだ。道三はこんなことを言い出したのである。
「さて、それではだ」
「それではですか」
「何をされますか」
「寺に入る前に見ておこう」
こんなことを言い出したのである。
「少しな」
「といいますと」
「どうされるのですか」
「一体」
「織田の者達が通る道の小屋の中に入る」
信長がこう言うとだった。周りも言うのであった。
「小屋の中からですか」
「見るというのですね」
「つまりは」
「そうよ。そうしてみる」
また言う道三だった。
「誰か共にする者はおるか」
「わしはいい」
最初に言ったのは義龍だった。見るからに不機嫌な顔での言葉だった。
「もうあの男のことはわかっておるわ」
「そなたはいいのじゃな」
「行くものか」
声にも不機嫌なものが出ていた。
「そんな下らぬものにな」
「まあよい」
道三はその我が子を特に咎めることも止めることもしなかった。どうでもいいといった口調でだ。こう我が子に対して告げるだけであった。
義龍はそのまま寺に向かう。しかしだった。
美濃三人衆に不破、それと竹中が残った。その他にはだった。
明智に細川もだった。この二人も残ったのだった。
そしてだ。明智が言うのであった。
「私達も宜しいでしょうか」
「御供させて欲しいのですが」
細川も言ってきた。
「その。織田殿をです」
「見たいのですが」
「ふむ」
道三はその彼等の申し出を受けてだ。まずは考える目を見せた。そうしてそのうえで再び口を開いてその二人にこう言ったのである。
「そなた達も感じておるな」
「おそらく道三様と同じことをです」
「そうかと」
「そうじゃな。では共に見るがいい」
微笑んでそれを許したのだった。
「ではな」
「有り難き御言葉、それでは」
「是非共」
「どうやらそなた達もまた」
道三はまた考
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