第十五話 異装その三
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「殿がそこまで仰るというのならな」
「それだけの者であるということ」
「そうなるな」
彼等は美濃の国人出身でありその実力だけでなく権勢もかなりのものだ。道三は彼自身のその力によって彼等を心服させているのである。
だからこそ彼等は道三という男をよく知っていた。その彼がここまで言うのならば、そう考えて当然のことであった。彼等にとってはだ。
そしてだ。不破もだ。密かに竹中に対して囁くのだった。
「のう、半兵衛」
「はい」
竹中も彼の言葉に応えて述べる。
「織田殿のことですね」
「どう思うか」
「私の聞くところ」
こう前置きしてからの言葉だった。道三には止められていたがおそらく不破とは気心の知れた仲なのだろう。彼は不破にこう話すのだった。
「まずその政はです」
「この尾張のか」
「見事です」
一言での評価だった。
「それはまさにです」
「見事か」
「尋常な政ではありません」
「そこまで凄いのか」
「ただ田畑を拡げ耕すだけではありません」
「町もか」
「そしてです」
その他にもだ。あるのだという。
「堤も万全で道まで整えております」
「そこまでなのか」
「はい、多くの家臣を使いこなしそこまでしています」
「ううむ、それは凄いな」
「しかも法は徹底させ罪ある者を決して許さず」
それもあるというのだ。
「民百姓は悪人に悩まされることもありません」
「そこまで聞けばだ」
「うつけには思えませぬか」
「わしとてそこまで愚かではないつもりだ」
これが不破の言葉だった。実際に彼は伊達に道三の重臣ではない。戦だけでなく政においてもそれなり以上の力を見せている。だからこそわかることだった。
「政は見事だ。これまでの道中でもそれはわかった」
「尾張に入られてからね」
「尾張の端だけだから確かなことは言えなかったがな」
それでもだというのだ。おおよそはわかっていたというのである。
「だが御主の今の話を聞いてだ」
「確信されましたか」
「その通りだ。そしてだ」
「戦ですね」
「尾張を一つにしたが」
不破は竹中とこのことも話すのだった。
「これもまた、だな」
「はい、容易にはです」
「できぬな」
「その通りです」
まさにそうだというのである。
「あれだけの時間で尾張を一つにするということはです」
「何でも織田の槍は相当長いらしいな」
不破は既にこのことを聞いていた。
「そうらしいな」
「それだけではなく、です」
「まだあるのか」
「鉄砲です」
竹中の目がここで光った。そのうえで言うのであった。
「織田殿は鉄砲を五百持っておられます」
「何っ、鉄砲を五百か」
「はい」
このこともだ。不破に話すのだった。
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