第十四話 美濃の蝮その十五
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それは美濃も同じだ。それがわかっていてだ。彼は言うのであった。
「だからだ。ここはだ」
「美濃の家臣達をですか
「傾いてそのうえで」
「騙す」
「そうされますか」
「そうよ、騙すのだ」
まさにそれだというのであった。
「よいな、騙すぞ」
「蝮殿ではなくですか」
「家臣達を」
「義父殿も見る」
彼もだというのだった。
「わしを見るつもりでわしに見られておるのだ。面白いだろう」
「いささか意地の悪いことではありますな」
林通具が左手を己の口に当てて述べた。
「悪戯をしてそのうえで見定めるとは」
「だが面白かろう」
「はい、確かに」
森可成は信長のその考えをよしとした。そのうえで彼の意見を述べるのだった。
「今は騙される方が悪い世ですから」
「国と国の付き合いは騙し騙されるものよ」
信長はそのことについてはこう断言した。
「だからわしも騙すぞ」
「では我等も」
「それにです」
「我等の命を」
「騙すからには命懸けよ」
これもまた信長の考えだった。それを述べてみせるのだ。
「よいな、覚悟はしておるな」
「無論です。それでは」
「今より」
「戦に向かう」
これは戦だとそういうのだった。
「そして勝つぞ」
「勝ちますか」
「この戦いも」
「無論だ。戦うからには勝つ」
信長の言葉はここでは素っ気無い。しかしそれはであった。彼の確かな、そして強い決意もまた存在しているのがわかるものだった。
「必ずな」
「ではいざ蝮殿の御前に」
「参りましょう」
「その前に着替えておけ」
このことをまた言う信長だった。
「皆盛大にな」
「はっ、承知しております」
「それでは」
こうしてであった。彼等は道三との会見に赴くのだった。それはまさに戦であった。剣を持たない、だが激しい戦になるのであった。
第十四話 完
2010・10・28
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