第十四話 美濃の蝮その八
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「伊勢じゃな」
「そうなるか」
「伊勢は豊かな国じゃ。しかも多くの勢力に分かれておるしな」
「攻めるにはもってこいの国じゃな」
「しかし殿は兵はあえてあまり使われずにじゃ」
「調略によってじゃな」
「うむ、それで手に入れられるおつもりじゃ」
信長の考えをだ。実によくわかっている木下だった。
「そしてそのうえでじゃ」
「そのうえで」
「それからは美濃か大和か」
こう言っていくのだった。
「どちらにしても最後は都じゃな」
「そういえば殿も時々言っておられるな」
蜂須賀も信長の言葉は聞いている。その中でだ。彼が都について言っているを聞いたことが何度かあるのだ。そのことを今思い出して言うのであった。
「そうじゃったな」
「都までは今は遠いが」
「やがてはじゃな」
「そういうことじゃ。さて、今はじゃ」
木下はここまで話したうえで話題を変えてきた。
「殿のところに行こう」
「おお、そうだったな」
「仕事が終わればそのことを申し上げに行く」
木下はこのことを忘れてはいなかった。
「だからじゃ。行くぞ」
「そうだな。それではだ」
「終わったら茶じゃ」
このことも忘れていないのだった。
「それではじゃ」
「まずは殿のところにな」
「うむ」
こう話してだった。二人は信長のところに向かうのだった。
そして美濃ではだ。今道三が馬上から家臣達と話をしていた。道を進みながらだ。
「殿、それでなのですが」
「このまま尾張に行きです」
「あの男と会われるのですね」
「織田信長と」
「決まったことだからな」
だからだと答える道三だった。
「もう言うまでもないことだ」
「それはそうですが」
「しかし」
「自ら美濃に出向くのではなく」
「殿に尾張に来いとは」
「それは」
このことにだ。美濃の者達は不満なのだった。
そしてだ。こうも言うのだった。
「殿はあの御仁にとっては舅だというのに」
「それで自ら尾張に来いとは」
「失礼ではありませぬか」
「そう思いますが」
「何、構うことはない」
またこう返す道三だった。表情は平然としている。
「それはだ」
「そうなのですか?」
「よいのですか」
「それは」
「そうだ、よい」
あくまでこう言う道三だった。
「気にすることはない」
「殿がそう言われるのならいいのですが」
家臣達は一応はこう返しはした。しかしだった。
まだ不満な顔でだ。主の周りにいるのだった。
そしてだ。道三の隣にいる熊の様な髭の異様なまでに大きな男がだ。こう言ってきたのだった。
「父上」
「何じゃ、義龍」
「わしも来いというがだ」
「それがどうかしたのか」
「何故じゃ。何故わしまで尾張に出向く必要がある」
道三の嫡子であ
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