暁 〜小説投稿サイト〜
戦国異伝
第十三話 家臣達その六
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話

「私はより強くなります」
「謙信様もまた」
「天には果てがありません」
 何処までもあるというのである。上がだ。
「ですから。私は何処までも昇りましょう」
「そして天下に」
「義を」
 これが謙信の願いだった。ここまで話して直江を下がらせだった。一人になると酒と梅を出しだ。この二つで楽しむのであった。
 信濃でも越後でも今は政に専念していた。幸村もその中にいた。
 彼は今は鍬で畑を耕している。服も百姓のものだ。その彼のところにだ。十人の男達が来たのだった。
「幸村様」
「ここにおられましたか」
「うむ、いい汗をかいている」
 実際に額に汗を流してだ。そのうえで彼等に言葉を返した。今空は青く雲一つない。日輪が照り実に素晴しい景色となっている。
 幸村はその中で畑を耕してだ。その彼等と話すのだった。
「御主等もか」
「はい、そうさせてもらっています」
「今は」
「うむ、よいぞ」
 幸村は彼等の言葉を聞いて笑顔になった。実に爽やかな笑顔である。
「ただ戦をしているだけでいいわけではないからな」
「畑仕事もですか」
「それもなのですか」
「いやいや、政だ」
 幸村は笑ってこう訂正させた。
「これは政なのだ」
「いや、これは畑仕事では」
「そうとしか思えませんが」
「確かに」
「拙者はまだ政についてよくは知らない」
 幸村はここでこうも話したのだった。
「だからこうして畑を耕しているのだ」
「そうだったのですか」
「それでなのですか」
「そうだ。そういうことだ」
 こう話すのであった。そうしてであった。
「そしてだ。御主達もやってくれているな」
「まあ我等はです」
「幸村様にお仕えしていますし」
「ですから」
 彼等にしてはだ。そうだというのであった。そしてその彼等にだ。幸村は言うのだった。
「拙者に仕えてくれるか」
「我等の主は幸村様です」
「そして信玄様ですね」
「ですから」
「有り難い。そう言ってくれるか」
 幸村はここであらためて彼等を見た。そうしてだった。
 まずはだ。緑の忍装束に茶色の総髪を髷にした男に言った。精悍な顔立ちでしかもその背中には大きなマントと銃があった。
「穴山小助」
「はい」
 次はだ。ざんばら髪に灰色の忍装束の男であった。鋭い目をしている。その腰には鎖鎌がある。それを持つことはないが鋭い輝きを放っている。
「由利鎌之助」
「はい」
 三番目はだ。大柄で岩の様な顔をした男だった。両腕の筋肉が凄まじい。まるで全てを破壊できるかのようである。服は黒い忍装束である。
「望月六郎」
「はい」
 四番目は鉢巻をして大きな目を持つ髪を立たせた男だった。手が長い以外は普通の外見だ。そして彼は藍色の忍装束だった。
「海野六郎」
「はい」

[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ