第十三話 家臣達その三
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「そしてそのうえで」
「この国に泰平をもたらします」
「では今よりだ」
信玄の言葉がここで戻った。
「信濃を治める。よいな」
「御意」
「それでは」
こうしてだった。武田の者達は信濃を本格的に治めにかかった。信玄はただ戦に強いだけではなかった。政もだ。恐ろしいまでに卓越していた。
「今より信濃を治めましょう」
「そしてあの地もまた」
「民達を喜ばせるのだ」
信玄はこうも告げた。
「よいな」
「はっ」
こうしてだった。武田の者達は今信濃も本格的に治めるのだった。武田は決して戦だけを見ているのではなかった。政もだ。それと同じだけ、いやそれ以上に見ているのであった。
そしてだ。謙信の前にもだ。彼等がいた。
「長尾政景」
「長尾景秋」
「宇佐美定満」
「新津勝資」
「金津義旧」
「北条景広」
「色部長真」
「本庄慶秀」
「本庄繁長」
「甘糟景継」
「杉原親憲」
「斎藤朝信」
「安田能元」
「高梨頼包」
「柿崎景家」
「千坂景親」
「直江景綱」
「竹股慶綱」
「岩井信能」
「中条藤資」
「山本寺孝長」
「吉江定仲」
「志田義秀」
「大国頼久」
「加地春綱」
この二十五人が謙信の前に揃いだ。そのうえで言うのだった。
「以上上杉二十五将」
「只今参りました」
「よくぞ来ました」
謙信はその彼等にまずはこう告げた。そうしてであった。
「それではです」
「はい」
「これからのことですね」
「甲斐の虎との戦いはまずは休息の時を迎えました」
謙信はその透き通った声で話した。まるで女のものの様な、そこまで澄んだ美しい声である。
その声でだ。謙信は言うのである。
「そしてその間です」
「兵を鍛錬し」
「そしてこの越後を」
「越後の民のこと、決して忘れてはなりません」
謙信もだ。民のことを忘れてはいなかった。そのうえで言うのであった。
「我が上杉の軍は何の為にいるのか」
「この世に」
「この日本にですね」
「そうです。何の為にいますか」
二十五将全員への問い掛けであった。
「それは。何の為ですか」
「はっ、それはです」
彼等の中でも一際賢明そうな、白い髭の男が言ってきた。
「民を護る為です」
「そうです。それこそが義なのです」
「義、毘沙門天の義」
「だからこそですね」
「民を苦しませてはなりません」
謙信は強い言葉になっていた。
「その為にです」
「今はこの越後を治める」
「そうされるというのですね」
「川を治め田畑を耕します」
まずはそこからだった。
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