第十二話 三国の盟約その六
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「あの者は」
「いえ、竹千代はそれでもです」
「入れる価値はあるのか」
「あの者の武芸は知っておりますな」
「うむ」
義元は雪斎野今の言葉に頷いた。元康は既に剣術に水練、それに馬術にだ。どれにおいても極めて優れたものを見せているのだ。
それは義元も知っている。だからこそ言うのであった。
「あれは見事じゃな」
「しかも軍学の書もほぼ全て読んでおります」
「和上の持っているものを全てか」
「努力して少しずつですが確実に身に着けます」
そうであるというのだ。
「今ではかなりのものです」
「そうなのか」
「そして政に関する書も多く読んでおります故」
「ここの出すのもよいか」
「あの者、このままいけば必ず今川の柱の一本となります」
ここまで言う雪斎だった。
「そして」
「そして?」
「拙僧を超えるでしょう」
「まさか。和上まで」
「竹千代を入れるべきです」
あらためて彼を推挙してきた。
「どうか御願いします」
「ふむ、わかった」
ここでだった。義元も遂に頷いたのだった。
そのうえでだ。雪斎にこう話した。
「そなたの言葉受けようぞ」
「有り難きお言葉。さすれば」
「しかし。そこまでの者か」
義元は袖の下で腕を組み考える顔になって述べた。
「竹千代は」
「左様です。拙僧はそう見ております」
「和上が言うのならば問題はあるまい」
雪斎は義元にとって師である。彼が出家していた頃何もかもを教えてもらったのだ。だからこそだ。彼への信頼は絶対であった。
それがわかっているからだ。彼はその言葉を認めたのだった。そうしてだった。
義元も連れてだ。そのうえで会談に向かった。そしてそこでだ。両家の者達を見るのだった。
義元は己の席に座ってだ。他の二人に言った。
「ようこそ来られた」
「うむ」
「義元殿もお元気そうで何より」
信玄と氏康がそれぞれ言葉を返した。
「ではここは」
「話をするといたそう」
「さすれば」
義元が軸となって話を進める。そうしてであった。
三つの家はそれぞれ婚姻を結ぶことで決まった。既に氏真と氏康の娘が婚姻を結んでおりそこに義元の娘が信玄の嫡子義信の妻となった。そして信玄の娘が氏康の嫡子氏政の妻となった。これで三国の盟約がなったのだ。
それができてからだ。雪斎は元康に言うのであった。
「これがじゃ」
「政ですか」
「左様じゃ、これがじゃ」
こう元康に話すのだった。
「政というものじゃ」
「そうなのですか」
「ただ家と家を結びつけるだけではない」
雪斎は言った。
「それにより憂いをなくしてじゃ」
「主な敵と戦うのですね」
「そういうことじゃ。そのことわかったな」
「はい」
元康は素直な顔で雪斎のその言葉に頷いた
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