第十二話 三国の盟約その五
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「ですからここはです」
「それはわかっております」
氏康も彼の言葉を否定しなかった。その通りだというのである。
「だからこそです。それがしもです」
「ここに来られましたな」
「この盟約で背を安全なものとし」
氏康も伊達に獅子とまで言われているわけではない。この盟約が北条に何をもたらすか、そのことは熟知しているのである。
だからこそだ。ここで言うのであった。
「そのうえで関東を」
「我が北条のものに」
「既に二つの上杉は倒しております」
河越の夜戦においてだ。氏康はここでもう一人の、精悍で逞しい男を見たのだった。
「孫九郎の力もあり」
「確かに」
幻庵もその男北条綱成の顔を見て言う。
「孫九郎のあの時の働きは見事でありました」
「その通りでございます。あの働きは実に大きかった」
「勿体なきお言葉」
その綱成の言葉だ。
「そう言って頂けるとは」
「だが事実だ」
「そうであるぞ」
氏康と幻庵は彼にこう言う。
「そしてこの度はだ」
「三つの家の盟約だが」
「はい」
「そなたにも見てもらう」
氏康が言った。
「よいな、それで」
「政を学ぶ為ですか」
「そうだ。戦ばかりではないのだ」
この氏康もただ戦だけの男ではない。その政も見事である。彼の領内もまた豊かになっており民は笑顔でいるのである。そうした意味では信長や信玄と同じである。
それでだ。北条綱成に対して言ったのである。
「わかったな、これで」
「はい、それでは」
北条綱成も主のその言葉に頷いた。そうして言うのであった。
「有り難く。いさせてもらいます」
「これから天下は大きく動く」
氏康もまた言うのだった。
「だからこそだ。力をつけておかねばならん」
「その通りでございます」
幻庵は主のその言葉に頷いた。
「そして今はです」
「参るとしよう」
氏康はこう言って立ち上がった。
「そろそろ刻だ」
「はい、それでは」
「今より」
後の二人も主に従った。そうしてであった。彼等もその部屋に向かうのであった。
三人の英傑達がそれぞれ対する。信玄も氏康もそれぞれの腹心達を二人ずつ連れている。その高坂や幻庵達である。義元もまた同じだった。
一人は雪斎である。そしてもう一人は。
ここに来る前にだ。義元は雪斎に言っていたのだ。
「朝比奈や岡部ではなくか」
「あの者達でもいいのですか」
「あ奴にすべきか」
「はい」
雪斎はこう主に述べた。
「ここは竹千代です」
「ううむ、確かに竹千代は筋がいい」
義元もこのことは認めた。元康の成長は彼をしても目を瞠らせるものであった。しかしであった。それでも彼は躊躇いを見せるのであった。
「家柄も申し分ないかのう」
「三河を治めていた松平
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