第十一話 激戦川中島その十四
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「尾張統一がじゃ」
「では。英雄です」
「わしはそうなるか」
「そしてその殿が創られるものをです」
「見たいのじゃな」
「是非」
帰蝶はこの場ではじめて笑ってみせてきた。
「見たいと思っています」
「ではじゃ」
「はい」
「言おう。わしは天下を目指す」
「天下をですね」
「上洛しそのうえでじゃ」
彼もまただ。妻を見てそのうえで話すのだった。
夕暮れの中でもだ。二人はそこに確かな光を見てそのうえで語っていた。そこには一切の邪なものはなかった。絆と、そして志と愛があった。
「天下を手に入れるぞ」
「そしてそれからは」
「この国を豊かな国にする」
「泰平だけでなく」
「富ももたらす。明や南蛮のどの国よりもじゃ」
「目指されますね」
「目指すのではない」
それは違うというのだった。
「そうするのだ、必ずな」
「必ずですか」
「そうじゃ、必ずじゃ」
こう妻に話すのだった。
「わしはやるぞ」
「では」
「美濃のことか」
「手に入れられるおつもりですか?」
聞きにくいことだがだ。あえて問うたのだった。
「父上の国も」
「だとすればどうする?」
これが信長の返答だった。
「その時は」
「では、です」
「うむ」
「取られるがいいでしょう」
帰蝶ははっきりと言った。
「それならば」
「よいのだな」
「はい」
また夫に告げた。
「殿がそう思われるならばです」
「ではじゃ」
妻のその言葉を聞いて。信長もあえて言いにくいことを尋ね返したのだった。
「わしと蝮が戦えばじゃ。その時そなたはどうする」
「私は、ですか」
「そうじゃ。その時はどうするのじゃ?」
「もう決まっております」
毅然とした返事だった。
「その時は」
「決まっておるか」
「私は貴方の妻です」
また強い顔に戻っていた。そのうえでの返答である。
「ですから」
「言ったな」
「はい、申し上げました」
確かにだというのだった。
「今ここで」
「そうだな。それでいいのだな」
「二言はありません」
ぶれはなかった。全くだ。
「ですから。私は何があろうと殿と共に」
「その言葉聞いたぞ」
「それでは」
「蝮に会うことに何の躊躇いもなくなった」
「そうなのですね」
「うむ、なくなった」
晴れ渡った顔であった。その顔での言葉だった。
「完全にな」
「それでは」
「わしの敵になるやも知れぬ男」
ここでもだった。あえて言ってみせたのである。
「是非会おう」
「それでは殿のその背中をです」
「護ってくれるか」
「妻は夫の背を護るのが役目」
これが帰蝶の考えだった。あくまで強い。
「ですから」
「蝮の娘である以上に」
「蛟龍の妻です」
そうであ
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