暁 〜小説投稿サイト〜
戦国異伝
第十一話 激戦川中島その十
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話

「どうやら甲斐の虎は」
「はい」
「噂通り家臣にも恵まれていますね」
 そうだというのであった。
「私と同じく」
「殿、有り難きお言葉」
「礼を言う必要はありません」
 その礼はいいというのであった。
「何故なら事実だからです」
「だからですか」
「事実に対して礼を言う必要はありません」
 戦の時とは違い穏やかな口調でだ。こう宇佐美に話すのだった。
「ですから」
「左様ですか」
「はい、それでは」
 そしてだ。謙信はこうも言うのであった。
「その若武者ですが」
「真田幸村ですね」
「見事です。間違いなく天下一の者になるでしょう」
「天下一ですか」
「我が家の直江と並ぶ」 
 その彼と共にだと。こう話すのだった。
「傑物になるでしょう」
「そうなるというのですね」
「そうです。これからが楽しみです」
 微笑んでいた。それは敵を語る言葉でも笑みでもなかった。
「その者のことが」
「そして直江もですね」
「あの者もまた同じです」
「天下一となれますか」
「必ずなります。そして」
「そして」
「天下にその名を永遠に残すでしょう」
 今だけでなくだ。これからもだというのであった。
「間違いなく」
「よくぞ我が家に生まれたものですな」
「全くです。さて、これからですが」
 話が変わった。謙信は今後の方針について話すのであった。
「先の軍議でも言いましたが」
「はい」
「武田とはこのまま戦います」
 そうするというのだった。しかしそれだけではなかった。
「そしてです」
「北条ともですね」
「相模の獅子、許しておくことはできません」
 謙信のその声に強いものが入った。氷の様でいてそれでいて熱い、そうしたものが今謙信の言葉の中に入ったのであった。
「関東管領である上杉様を放逐した罪は必ず知らしめます」
「その通りです。そしてなのですが」
「一向一揆もですね」
「あいも変わらず越後を脅かしております」
 謙信の敵は一つではなかったのだ。彼もまた多くの敵を抱えていた。
「それにつきましては」
「同じです」
 返答は一言だった。
「軍議で述べた通りです」
「左様ですか」
「敵は正面から戦い、そして倒す」
 それこそがといわんばかりの口調であった。
「それが毘沙門天の戦い方ですから」
「わかりました。さすれば」
「どの勢力と戦い、そして勝利を収めます」
 そこに二つのものはなかった。ひたすらまでに純粋なものしかなかった。
 そのうえでだ。謙信はまた話題を変えてきたのであった。
「そしてです」
「上洛ですね」
「それはどうなっていますか」
「それについてはです」
 宇佐美の言葉はだ。ここで曇った。そのうえで主に対して言うのであった。
「一向一揆がい
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ