第十一話 激戦川中島その九
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「そなたをな」
「御館様・・・・・・」
「源次郎、そして皆の者よ」
「はっ」
「御館様、これからは」
二十四人の中でもだ。とりわけ精悍な凄みのある顔の男がいた。整っている顔だ。しかしその顔にはまさに炎の如き、凄まじいまでの烈気を見せていた。
その彼の名前は山県昌、兄である稲富虎昌と共に武田家の中でも屈指の猛将として知られている。その男が信玄に対して問うたのである。
「どうされますか」
「既に上杉軍は退いた」
「はい」
「では我等はもうここに残っている理由はない」
そうだというのであった。
「甲斐に戻る」
「畏まりました」
「海津の備えにはだ」
流石は信玄であった。戦いが終わってもだ。それでも備えを残しておくことは忘れていなかった。そうして高坂を見て彼に告げた。
「源助」
「はっ」
「これまで通りそなたが残れ」
こう告げるのだった。
「よいな」
「それでは」
「さて、甲斐に戻ればだ」
信玄は指示を出したうえでまた話した。
「来ておるな」
「といいますと」
「何が」
「今川からよ。人が来る筈じゃ」
こうその二十四人の名臣達と幸村に話した。
「面白い話を持って来てな」
「面白いですか」
「そうした話を」
「うむ、来る」
信玄はまた言った。
「間違いなくな」
「ふむ。といいますと」
初老の男が言った。穴山信君である。
「この戦のことだけではありますまい」
「そうでござるな。おそらくは」
「今川は我等とだけでなく相模の北条とも手を結んでいる」
「となれば」
「次は」
他の将達も次々と言っていく。その様子は信長の家臣達と比べても全く遜色がないまでに活気がありそして聡明なものであった。
「我等と北条をか」
「手を結ばさせるつもりでござるな」
「どうやら」
「よいことだ」
そして信玄も言うのだった。
「今回の戦で和議がなったとしてもこの戦だけのこと」
「はい、この度の戦だけのこと」
「また上杉とは、ですから」
「戦うことになるでしょう」
「それでは」
「上杉は強い」
信玄は家臣達に対してあえてこのことを話した。
「今他の家の相手をしている余裕がないまでにな」
「では。今は主な敵を上杉に絞りそのうえで領土をさらに拡げる為にも」
「今はでござるな」
「北条とも手を」
「そうする。よいな」
「はっ」
「それでは」
家臣達は信玄のその言葉に頷いた。これで決まりだった。
武田軍は信玄の指揮の下甲斐に戻った。戦場に残った遺品や亡骸の類は高坂が供養しそのうえで越後に送った。謙信もそれを居城である春日山城で受けた。
今は鎧兜を脱ぎ平時の服に僧侶の頭巾を着けている。その姿で白髪の口髭の男、宇佐美定満の報告を聞きだ。女性の様な華麗な物
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